TOP > Activities & Reports > 学会へ行こう! > 【第1回実験報告】ゾウリムシ ー自発、自主のモデル生物(小野はるか)
小野 はるか(おの はるか)
1987年 宮城生まれ 現在、東北学院大学教養学部情報科学科所属
もっと簡単な生き物だと思ったら、動き方に面白い動きが見られたり、実は賢いかもしれないと思った。
ゾウリムシをシャレーにあけてながめると、水溶液の中をまっすぐにすすんでいき、一瞬、とまり角度をかえて、また走り出す様子が観察される。特に水溶液の外側から、刺激をあたえているわけではないのにターンを繰り返しながら、泳いでいる。この状態をゾウリムシの自発的な行動という意味で、「自発」とよぼう。
次にゾウリムシになんらかの刺激をあたえると、ゾウリムシの応答がAとBというように2つに分かれる場合がある。集団でいうと個体差がでてくる。同じ刺激をあたえられても、応答がことなる場合をゾウリムシの自主的な行動という意味で「自主」よぼう。
本研究の目的は、自発、自主といった生き物の基本的な性質をゾウリムシの行動を観察することで定量化し、議論する。
1.500mlの培養瓶に切ったワラを瓶の底から2cmぐらいの厚みでしく
2. 120度、12分でオートクレーブにかける(フタはゆるめておくように)
3. 瓶の温度が十分にさがってから、 ゾウリムシを5ml程度うえつぐ
・酢酸ナトリウム0.1M
・蒸留水
・マイクロピペット
・顕微鏡(ビデオつき)
・ゾウリムシ
・シャーレ
ゾウリムシの動きを観察しながら、映像を撮ったり撮影したりするために、カメラつきの顕微鏡で観察。
1.ゾウリムシの培養液をロートとガーゼを使ってワラなどのゴミを濾過した
できたゾウリムシの水溶液を以下の条件で観察した
1.自然な状態におけるゾウリムシ
2. 酢酸ナトリウムの水溶液を用意し、ゾウリムシの水溶液に滴下した
0.1M 500mM 250mM 125mMの濃度の酢酸ナトリウムをマイクロピペットを用いて滴下した。
○肉眼で見てみる
肉眼で見たゾウリムシは丸く落とした水溶液の中を円を描くように動いているように見られた。みんなで同じ方向へ動いているように見えた。
○顕微鏡から見てみる
・全体的に見るとぼまっすぐに魚のように進んでいた。肉眼で見たときのような統一性も見られず、急な方向転換しているものも見られた。分裂を始めるのがいくつか見られた。
・一匹をずっと観察してみると、光が反射しているのか光っている面と、光っていない面があり、それがクルクルと回っているように見えた。
すべての濃度を、1滴ずつ滴下してもそんなに大きな変化はにように見られたから、3滴(30μL)ずつ滴下した。(図はすべて3滴ずつの結果)
○ 0.1M
・0.1M滴下した時動かなくなった(死んだ?)ゾウリムシを見つけた。
・滴下した瞬間はびっくりしたように逃げるが、しばらくすると全体的な大きな変化がなく普通に動き回っているように見えた。
・でも分裂を始めるゾウリムシが自然状態より増えて、最初の量よりゾウリムシが増えた気がした。(図3)
○ 500mM
・滴下した付近には近寄るゾウリムシは減った。(図4)
・それ以外の動きの変化はあらみ見られない。
○ 250mM
・滴下した場所とは反対方向へと移動。
・滴下付近にはほとんどいない状態。(図5)
・死んだゾウリムシも見られた。
○ 125mM
・死んだゾウリムシが見られた。250mMのときより多い。
・滴下した場所にはほとんど近寄らない。(図6)
⇒ 普通高濃度の方が近寄らない、死ぬというイメージがあるが低濃度のほうが動きがあったのは何故か。
浸透圧によるものかという視点から考えてみた。
何故250mMと125mMを比べた時、125mMのほうがたくさん死んでいるのか?
125mMの場合水の割合が高く、細胞の中に水がたくさん移動してくる。それが膨張しすぎて破裂するのではないか?と考えられる。
滴下した付近に近寄らないのも、酢酸ナトリウムも拡散はしていくが、滴下付近の方が酢酸ナトリウム水溶液の濃度は高いから、
ゾウリムシ自身で近寄り酢酸ナトリウム水溶液の領域に入ったら、膨張してしまうなどと自ら判断をして近寄らないのかもしれない。
《 考察 》
○ 観察からわかったことは、図7のように濃度が低いほど逃げたゾウリムシが多く、
高いほど少ないということである。ということは、濃度が薄ければ薄いほど、ゾウリムシにとって悪影響を与えるということが考えられる。
その考えを元にすると原因として浸透圧が当てはまるのではないかと考えられる。(浸透圧の説明については下で補足)
○ 250mMからはっきりと反応が出るようになったのは、ゾウリムシにとって、
500mM〜250mMの間で低張液になっていて、ゾウリムシの体内に水を吸い込み膨らんで破裂してしまうという危険があり、
それをゾウリムシ自ら察知しているのではないかと考えられる。
現に、125mMあたりでは膨れているように見えたゾウリムシもいた。
○ 0.1Mと500mMではあまり反応に変化が見られなかったのは、等張液もしくは高張液ではないかと考えられる。
しかし、どちらの濃度においても高張液の反応である“縮む”というゾウリムシは見られなかったと思うので、
高張液とは判断できないし、低張液でもあんまり反応を示さない程度の量であったかもしれないので、等張液とも言い難いと思う。
○ 結果としては0.1M、500mMについてはなんとも言えないが、250mMと125mMに関してはゾウリムシとって低張液と考えられるし、
浸透圧の影響によって逃げるという現象がおきると考えられなくもないと思った。
浸透圧とは図に示しているように、外部の濃度と内部の濃度を一定に保つために、水分子が移動するという現象のことである。
図では植物細胞を例にとって説明している。動物の細胞の場合は細胞壁のようにがっちりとしたものはないため、低張液につけすぎると膨らみすぎで破裂する恐れもある。
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