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NHKラジオに出演しました

文責:大草 芳江 (2008年3月 3日) カテゴリ:大草 芳江(23)

本日は、NHK「よじらじ宮城!」というラジオ番組に出演し、
生放送で約20分ほど、私どもの取組みについてお話させて頂きました。

インタビュー内容につきましては、 以下にまとめましたので、
ご興味のある方はご覧ください。


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よじらじ宮城!あなたの出番  「科学で地域づくり」

―きょうのゲストは、NPO法人ナチュラルサイエンスの理事の大草芳江さん。
東北大学理学部大学院中に(有)FIELD AND NETWORKを起業され、
去年5月、その一部門をNPO法人化されました。

―ナチュラルサイエンスとは、大学や組織の枠を超えた若手研究者や学生が主体となり、
 "科学"という切り口から、地域に密着した形で、様々な活動を行っているNPO法人です。

―どんな活動を続けているのですか?

・体験型自然科学教室(春夏秋冬、科学者と一緒に、親子参加型の自然の中で行う科学教室)
・科学教育プログラムの開発(独自で教室開催、国のプロジェクトの委託など)

―そもそも活動をはじめたきっかけは?

東北大学理学部大学院に在学中の頃から、活動を開始したのですが、
そもそもの活動の原点は、高校まで自分が受けた教育にあると思っています。

理学部に入って驚いたことは、そもそも世界には明らかになっていないことばかりで、
むしろ明らかになっていることは、ほんの一部なのだという事実です。

そして現在「正しい」と言われている事実も、
実はある前提や仮説の上に積み上げられているものであって、
その前提や仮説が崩れ去ってしまえば、「正しい」とは言えなくなってしまうんです。

では何を重要視されているかと言えば、対象を見て、そこから物事を論理的に考える力、
いわゆる論理的思考力、科学的思考力と呼ばれるものの育成です。

例えばテストも、先生によっては、
知識を知っているかと言うところだけで点数をつけず、
むしろ考え方が論理的で筋が通っているかという点を重視して、
点数をつけてくれるんです。

また、私が専攻していた分野は、生物という比較的新しい分野だったため、
数十年前の世界標準の教科書が、現代の認識から見れば、
真逆のことを言っている場合だってあります。

すなわち、単に言葉や知識を知っているだけでは全く意味がなく、
それらを自分で論理的にくみ上げることができて
はじめて意味があるのだということを、痛感しました。

そのときはじめて、これまで自分が学んできた教科書的世界と、
現実的世界とが乖離していたことに気づいたのです。

ちなみに、知識には、大きく分けると「暗黙知」と「形式知」という
2つの知識があることをご存知ですか?

一般的に、「暗黙知」とは確かに知ってはいるのだけれども言語化できない知識、
「形式知」とは、言語化できて他人と共有可能な知識のことを言います。

たとえば自転車を例にすると、
自転車に乗れる人は、たしかにその乗り方を知ってはいても、
その乗り方を説明してください、と言われると説明することが難しいですよね。

例えばこういう条件のときは、手の角度を何度傾けて、どのくらいの力で漕ぐとか。

そういった、知ってはいるんだけど他人に説明することができない
ノウハウのような知識を「暗黙知」と言います。

一方「形式知」とは、みんなが共有できる教科書的事実のことを指します。

結局、理学部で培ってきた力と言うのは、
教科書的事実である「形式知」のみを習得するということではなく、
自分の目で見て感じた「観察結果」である「暗黙知」から、
それを誰がどう見てもそうだと言える「形式知」へ変換するための方法だったんですね。

つまり、「形式知」からはじまり「形式知」で終わる知識は
ほどんど意味を成さないということです。

これまでの教育は、どちらかというと
「形式知」にはじまり「形式知」に終わるような知識の習得ばかりを重要視してきた結果、
自分の目で見て感じることから得られる「暗黙知」の習得自体が、
疎かになっているように感じています。

だからこそ、まず第一歩目として、
自分の目で見て触って、五感で感じ、自分で行動していかなければ、何もはじまらないし、
そうしていかなければ、現実的世界と、教科書的世界が、
どんどん乖離していってしまうと強く思っていました。

そこで最初にはじめたのが、「体験型自然科学の教室」という、
子どもたちが自分の目で見て触って、五感で感じることを主軸にした、
自然の中で行う科学教室です。

また、現在開発している科学教育プログラムも、
この「暗黙知」から「形式知」への変換に主軸をおいた構成になっています。

―具体的にどんな活動をしているのか、一つ紹介して下さい。

現在、経済産業省の「理科実験教室プロジェクト」という事業の委託を受け、
科学教育のプログラム開発と実施を行っています。

この趣旨は、地元企業のリソースを活用することで、
実社会と結びついた理科の授業を実施しようというものです。

今年度は、県内5つの小学校で実施してきました。

この事業のサイエンスのコーディネイトを担当しています。

一例として、大手住宅メーカーの協力を得て、
「大地のつくり」の理科授業を行いました。

授業の内容としては、大手住宅メーカーの仕事として、地質を調査し、
その土地に合った基礎をつくってから家を建てるというお話なのですが、
「こういう風にして家が建っているのですよ」というだけでは、
「へ~、そうなんだ」程度の形式知で終わってしまいます。

それはそれで、授業としては成り立つのですが、
私たちはそこから一歩踏み込んで、
「そもそも土とは何か?」という理学的な問いかけからプログラムを構成しています。

具体的には今回は、土の性質を理解するために、
3種類の土の吸水速度をみんなで定量化する実験を行いました。

定量化とは、誰だがどう見てもそうだという科学の言葉に変換するという意味です。

土の吸水速度の話は、科学的に言えば、毛細管現象の実験なのですが、
たかが3分くらいの実験でも、明確なちがいが現れ、
単に「さらさら」「ざらざら」という主観的な表現だったものが、
例えば「礫の方が、何秒のところで何センチ上がるほど、早かった」と言った
科学的な表現を子どもたちはできるようになりました。

土そのものに子どもたちの興味が湧いた段階で、
その土の上に住宅が建つのだという話を企業の講師にしてもらうと、
子どもたちの興味の湧き方が、一歩踏み込んだ形になりました。

普段の視点なら、ただの土でしかないものなのに、
科学的な視点で見てみれば、いろいろな土に見えてきます。

そうすれば、授業後も、いつもの校庭の土が、ちがう土に見えてくるんです。

実際に、当日の授業後、子どもたちは自主的に
校庭や花壇などのいろいろなところから土をそれぞれ持ってきて、
土を観察したり話し合ったりする光景が見られました。

このように、今回は「土」をテーマにしていましたが、
一度科学的な視点で「土」を見てみると、その後の広がりがあります。

しかも、その広がりが、子どもたちそれぞれの個性によって、
異なっていくという点も、面白い点だと思っています。

授業を通して、科学のスタンス、つまり論理的思考力の育成を養うことを目指しています。

本質的な科学のプロセスを教えれば、子どもたちは独自のそれぞれの見方というものを
こちらが指示しなくても、後は勝手にやってくれます。

そこまでやってはじめて、授業として成立するのではないかと考えています。

―他にも面白いプログラムを企画しているということで、その授業の教材を持ってきて頂きました。

こちらは、ゴム長靴の靴底です。県内の大手ゴムメーカーからご協力頂きました。

この靴底には、様々なノウハウが詰まっていますので、これらを教材にして、
小学生に「摩擦って何なんだろう?」という視点を体感してもらいたいと思っています。

そして、他のものも見ても、その法則性を見つけれるような力をつけてもらいたいです。

このような形で、地元には、いろいろな技術をもつ企業さんがたくさんあります。

そういった企業さんといろいろな形で協力し合いながら、
地域全体で地域の教育に携わっていければと考えています。

―子ども達に科学への興味を持ってもらうためには、
 お父さんお母さんはどんな工夫をすべきだと思いますか?

子どもたちが五感で体験できるいろいろな場所に、どんどん連れて行って
遠くで見守りながら、野放ししておくのが良いと思います。

「野放し」と表現した意図は、親が良かれと思って与えたものが、
逆に子どもが自分で見る力・聞く力・感じる力・考える力を失わす方向に働く場合も多いからです。
宮城には自然も多いので、よい環境があると思います。

知識には、体験に根ざす「暗黙知」と他人と共有可能な「形式知」の
二つに分けることができると言われていますが、
特に幼少期は「暗黙知」の領域を養うことだけを考えるくらいが丁度良いのではと思っています。

最初はちょっとはみ出したくらいでも、
後々は、その「暗黙知」がその子どものベースとなり、
非常に大きい力になると思います。

ただし、無視して放っておけばいいという話ではありません。
一歩引いたところで見守るという姿勢ぐらいがちょうどいいと思っています。

―今後の夢をお願いします。

今後の活動方針としては、科学という切り口が持つ可能性を、
様々な形で実現していきたいと考えています。

例えば今なら、科学のスタンス、科学的な視点を、
授業プログラムの開発に活かして、小学生に授業を行っていますが、

これからは、地域社会と子どもたちをつなげられるような道筋を
科学と言う切り口から考えています。

そういう意味では、企業のリソースを活かした授業プログラムの開発も、
その直線上に乗っています。

今後はそれをより大きく、多様な形にしていきたいと考えています。

具体的には、半年後くらいに、独自の地域と科学と教育をつなぐような
シンポジウムを開催する予定です。
ここで、その方向性をまずは体現したいと考えています。

そして最終的には、地域全体が学校になるような形をつくりたいと思っています。

わたしたちは、科学というものを、研究とは違う見方でとらえることで、
これまでとはまた違った価値を社会に提供できるのではないかと考えています。

これらを模索しながら、今後も地域に密着した形で活動できればと思っています。

―ありがとうございました。NPO法人ナチュラルサイエンスの理事の大草芳江さんに伺いました。



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