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フィールドにおけるアリの巣の実験

文責:林 叔克 (2009年4月27日) カテゴリ:研究の概要(3)
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琉球大学で亜熱帯に生息する社会性昆虫の研究を行っている辻研究室との共同研究の一環で、 フィールドワークを行ったので、その結果を報告する。

学院大学での実験のために、沖縄本島においてトゲオオハリアリの巣の採取を行った。 まずトゲオオハリアリの巣を見つけるために、フィールドでアリをさがし、その後を追い、巣まで追いかけた。 帰巣するアリの軌跡をみると、ほぼ直線的に巣穴に向かうことがわかった。 アリが自然環境中で、自分の位置と巣の位置関係を知るための方法として、以下が考えられる。

  • 1.太陽の偏光
  • 2.巣の周りの環境からのにおい
  • 3.巣の周りのフェロモン
  • 4.巣の周りの景色の記憶

これらのの要素を組み合わせて、各個体は帰巣していると考えられる。 そこで、巣穴のまわりを20cm×30cmにわたって、除草し、土を1cmほど掘り表面を露出させた。 この環境の変化に対して、帰巣するアリは、巣穴のだいたいの方向がわかっているらしく、 大きな方向性は、巣穴の方向を向いている。 環境変化を起こす前との相違としては、帰巣する各個体はより大きな角度で、首振り運動を行っていることが挙げられる。 首振り運動とは、個体が体軸のベクトルを左右に振ることである。 巣穴から出てくる個体は、露出した土の周辺部に達すると境界にそって歩行を始めた。

巣穴の周りの環境を変化させても、帰巣できることから、巣の周りの環境からのにおいや、フェロモンに頼って、巣の位置を見つけているとは考えにくい。 おそらく、ミツバチの研究で知られているように、太陽の位置や、偏光にもとづいて、巣の大まかな方向を記憶していると考えられる。 巣の周りの景観を20cm×30cmの領域で変化させたが、 各個体は首振り運動をより大きくすることによって、巣穴を見つけることができた。 したがって、かなりの広範囲にわたって巣の周りの空間を記憶していて、巣穴の周りの数10cmの範囲において、ある程度のランダムな探索を行い、巣穴を発見するのではないかと、考えられる。 トゲオオハリアリという種は、単独で狩りを行うので、集団で採餌を行う種に見られるフットフェロモンを使った集団行動とは違い、各個体の記憶により大きくもとづいた行動をとっていると考えられる。

複数個体の行動としては、2個体が出会うとアンテネーション(触覚同士の接触)を始める。 これは巣穴の周辺のどれぐらいの領域で、環境の変化が起こったかを個体間で認識するための行動と考えられる。

巣から出てきた個体の探索行動は、15分程度、継続したが、その後は巣穴からほぼ直線的に環境に出て行くことが観察された。 2個体間で頻繁なアンテネーションが見れらた時間間隔が15分であることは、実験室でみられた2個体の行動におけるアンテネーションを頻繁に行う時間間隔とほぼ一致する。 したがって、実験系で見られた行動は、未知な空間における探索行動であると考えられる。

探索終了までの時間間隔が15分であることは、 この時間間隔のあとは環境変化に対して、慣れてしまったと考えられる。 トゲオオハリアリは、雨が降ったり、動物が踏み荒らしたり、という環境変化を迅速に認識し、 その後は、環境変化に慣れてしまう。

ant_angle_fluctuation.jpg

ここまでは、フィールドでの観察結果だが、フィールドでもビデオ撮影によって、 ある程度の個体の運動の定量化ができると考えられる。 例えば、 実験方法

  • 1.巣の上にビデオを接地する。
  • 2.巣から出てくる個体をマーキングする。
解析方法
  • 1.画像処理により、巣の周りにおける個体の重心の軌跡を計算する。
  • 2.体軸ベクトルの角度の時系列から、自己相関関数を計算する。

以上の定量化により、各個体の外の環境における滞在時間や、生息範囲などが明らかにできる。 また角度の自己相関関数から、個体が探索行動を行う際の行動に特徴を見つけることができる。



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