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研究テーマ

少数の働きアリによる行動解析とモデル化
アリ ―コミュニケーションのモデル生物―

文責:林 叔克 (2007年12月13日) カテゴリ:少数の働きアリによる行動解析とモデル化日誌

アリって働き者っていうけれど、どうもアリをじっくりみていると、さぼっているように思う。何匹かのアリをみていると、いつさぼろうか相談しているみたいだ。女王アリと働きアリの存在は知られているが、アリの社会には、中間管理職はないのだろうか?


研究の目的

アリは新しい環境に遭遇すると周囲を探索し始める。アリ一匹をみると、右に左にゆれながら、歩行している。 一歩ごとにサイコロをふりながら、歩く方向を決めているようである。実際に歩行の軌跡を解析するとランダムウォークしていることが明らかになった。 このようなランダムなゆらぎによる探索は、生き物がもっている「ゆらぎ」の発現だと考えられる。
本研究では、アリ一匹がもつ行動の解析にとどまらず、アリ同士がどのようにコミュニーニケーションをしているのか、ゆらぎに注目して研究する。

1.進行方向のゆらぎ:アリの頭からおしりを一直線で結んだ直線をアリの進行方向と定義し、その角度変化を時間にそってはかる。
2.個体間の距離のゆらぎ:数匹のアリの個体間の距離の時間変化をはかる、

一匹のありの進行方向のゆらぎ、個体間の距離のゆらぎがアリの数によってどう変化するかを解析すれば、 新しい環境を探索するアリたちのコミュニケーションのあり方がみえてくるはずである。


実験装置

アリにはケースの縁を歩く性質があるので、長方形のケースでアリの歩行を観察すると境界ばかりを歩く様子がみられる。そこで境界の影響をできるだけさけるために30cmのアクリルの半球を用意した。アリは重力を感じるので、半球の境界にはあまり近よらない。巣からもってきたアリを半球内に放ち、上からビデオで録画する。 ビデオにとった画像を解析し、アリの軌跡の抽出を行う。アリは化学物質を放出しながら歩行するので、実験が終了するたびにエタノールで半球の表面をふく。 


実験結果と考察

2匹のアリをアクリルの半球に入れた瞬間の時間をゼロとして、アリの軌跡、2匹のアリの間の距離、2匹のアリの速度をはかった。 図3にアリ一匹に軌跡を示す。楕円で囲った部分は、もう1匹のアリの軌跡と重なることから、2匹のアリは局所的な場所に集まってくるものと思われる。 
2匹のアリの60分ごとの軌跡をみると(図4)、 
(1)最初の60分は活発に半球の表面を探索している様子が観察された
(2)60分後あたりから、アリの軌跡は局在化し始め、あるスポットを中心に2匹が集まっている様子がみられた
(3)120分後からは、さらに局在化がすすみ、ある地点を中心に行動する様子がみられた
(4)180分後からの1時間は、さらに不活発になりある地点に2匹のアリがとどまっている様子が観察された


2匹のアリの間の距離を二値化したものが、図5であるが、集合と離散を繰り返している様子が観察される。新しい環境に入れられた2匹のアリは最初は頻繁に集合と離散を繰り返すが、次第に集合している時間間隔が長くなる。
図6は2匹のアリの速度の時間変化を示している。
Stage I 2匹のアリは集合・離散を繰り返した
Stage II 1匹のアリがある地点にとどまり、もう1匹のアリが探索するという役割分担のような現象が観察された
Stage III 2匹のありは、ある地点にとどまり、ほとんど動いていない
新しい環境を探索する際に、最初はランダムに歩行しているようだが、ある時点から、2匹のアリはある地点において集合し、そこから探索を行っている。3次元空間において、互いの位置をなんらの方法でしり、ある時間周期で集合・離散を繰り返している。 ゆらぎによる歩行がコミュニケーションによって局在化しているものとみられる。さらに役割分担の原型がすでに2匹のありによって見られたのではないかと思われる。

今後の予定

1.2匹のアリによる実験を繰り返す
2.ナショナルインスツルメンツ社のLabVIEWによる画像解析のプログラムをつくる 
3.リアルタイムの画像処理により、アリ同士の距離を計算する
4.2匹以上のアリについても実験をおこなう


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