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学会等での発表
「科学的思考力」の育成に主眼を置いた環境教育の実践

文責:大草 芳江 (2008年11月 9日) カテゴリ:学会等での発表

 11月8日、ストップ温暖化センターみやぎ主催「エコdeスマイルコンテスト」にて、natural science の取組みを、「『科学的思考力の育成』に主眼を置いた環境教育の実践」というテーマで発表し、入賞しました。具体的な取組内容よりも、natural science のスタンス表明に重点を置いた構成としました。

natural science とは?

 natural science とは、若手研究者や学生らを中心に、「科学」を切り口とした様々な活動を行っているNPO法人です。

「科学」って、そもそも何だろう?

 「科学」というと、知識や客観的事実のイメージや、中高生の皆さんにとっては暗記科目というイメージがあるかもしれません。しかしながら、そもそも「科学する」こととは、対象と「自分とのつながり」を感覚と知覚によって認識し、そこから、ものごとの因果関係を分析的・論理的に体系化していくことです。これを「科学的思考力」といいます。

 すなわち、「科学」と言うと客観的な知識ばかりが注目されがちですが、実は「自分とのつながり」を感じることから、科学ははじまるものなのです。

現状認識

 しかしながら現状は、よく問題として指摘されているように「知識偏重型」の教育、すなわち対象と「自分とのつながり」をリアルに感じる前提がないまま知識を詰め込む、受身そのものの教育がなされています。その結果が、よく知られているのは子どもの理科離れ問題ですが、実は、より深刻だと指摘されているのが、大人の科学リテラシー低下です。それらはわが国の科学技術研究及び産業競争力の強化を実現する「科学技術創造立国」の基盤を揺るがす深刻な問題として、もはや国民全体による知の問題、すなわち社会的リスクであると捉えられています。

環境教育で起こりうる問題

 実は、同じような問題が、環境教育の場にも起こっています。そもそも環境教育の目的は、文科省によると、「自己を取り巻く環境を自己のできる範囲内で管理し,規制する行動を、一歩ずつ確実にすることのできる人間を育成する」こと。すなわち、環境と「自分とのつながり」を感じ、環境を自分の問題として捉え、自ら考え行動する環境リテラシーの育成です。これらの主体的・創造的・継続的な活動が、持続可能な社会の構築につながる力です。
 一方、「地球を守ろう!」などスローガンから入る環境教育は、一見尤もらしく、言われ続ければ自分も頑張ろうと思えるだけの効果はあります。しかしながら、それが対象と「自分とのつながり」をリアルに感じるだけの前提がないまま行われる教育であれば、知識詰込型の受身教育と全く同じ構図に陥る危険性があります。その結果、本来養われるべきはずの環境リテラシーは低下し、「持続可能な社会の構築」の基盤を揺るがす社会的リスクへと発展する危険性があるのです。

natural science のアプローチ

 以上の現状を踏まえた上で、我々natural science では「科学的思考力」の育成に重点を置いた科学教育プログラムの開発・実施を行っています。例えば、地球温暖化の原因と言われる「二酸化炭素」をテーマにする場合、スローガン的教育では「二酸化炭素が原因なので、減らさなければならない」という特定の因果関係のみで終始しますが、natural science のプログラムでは、「そもそも、二酸化炭素とは何か」という「問いかけ」からはじまります。

 「問いかけ」は、自ら対象と「自分とのつながり」を認識しようとする能動的な営みです。そこに個性がはじめてあらわれます。反対に「問いかけ」の余地なく特定の因果関係を鵜呑みにさせる教育は、個々人が自ら考え行動できる前提を奪うことにつながります。

 すなわち、個々人が「問いかけ」る前提をつくることと、それらを分析的・総合的に組み立てていける前提をつくることが、教育する側が考慮しなければならない点です。

natural science の事例紹介

 「二酸化炭素」をテーマにした具体的な取組みとしては、幼児から小学生の親子を対象とした自然の中で行う科学教室「体験型自然科学の教室」があります。科学教室ですが、科学の知識を与えることは重視していません。08年春の教室では、個々人が対象と「自分とのつながり」を感じられる前提をつくることに主眼を置きました。

 具体的に行ったことは、身近な公園で、人間の呼吸、化石燃料燃焼、緑の中、緑と街の境目、街の中で、子ども自ら二酸化炭素を定量化するというシンプルな行為です。

 ここで大切なのは、二酸化炭素の数値や知識を覚えることではなく、定量化という行為を通じて、「二酸化炭素とはそもそも何なのか」を自ら問いかけることができる前提を、場として設定するという点です。そのためには、場を設定する側の人間も、「問いかけ」の姿勢を持つことが必要条件となります。そのため、natural scienceに「かがくしゃ」として参加する若手研究者や学生には、「問いかけ」の姿勢が大きく問われます。 「問いかけ」の姿勢がなければ、子ども達自らが対象と「自分とのつながり」を感じられる場はつくれません。

 ただし「問いかけ」の姿勢は必要条件であって、十分条件ではありません。それは「問いかけ」そのものが個人的な営みであるため、場として共有することがそもそもできないものだからです。

 そのため次の段階としては、対象と「自分とのつながり」を感じられる場の設定を、「科学的思考力」の一部分としてプログラム化することを行っています。それに応じて、教室の形態も今後、変化していくことが考えられます。

natural science の今後について

 今回は一部の取組みを例にしましたが、natural science では、対象年齢に応じた科学教育プログラムの開発・実施を行っています。これらはすべて、「科学的思考力」、すなわち、対象と「自分とのつながり」を感覚と知覚によって認識し、そこから、ものごとの因果関係を分析的・論理的に体系化していくことに主眼を置いたプログラムの構成になっています。

 また、natural science では、「科学と地域」をテーマに活動を行っています。地域の各種企業や研究機関との連携の下、研究と教育を2本柱に、活動を続けています。

 今年7月、東北大学片平さくらホールにて主催した科学イベント「第1回 natural science シンポジウム」では、「科学って、そもそも何だろう?」をテーマに、地域の企業や研究機関12団体が出展しました。単なる商品説明や研究紹介ではなく、それぞれの団体が「科学的思考力」を可視化した体験ブースには、親子連れ、学生、お年寄りなど老若男女約300人が集まりました。

 来年の6月頃は、この「natural science シンポジウム」をさらに発展させ、仙台市の街中(アーケードなど)で、「サイエンスフェスティバル」を開催予定です。

 これからも、「科学で地域づくり」を目指して、活動を続けて参ります。


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