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Report

平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」
【授業タイトル】 まさつのはたらき(5年生)

【協力企業】弘進ゴム株式会社

【授業のねらいと概要】

項目内容
授業のねらい

ものをすべらせる実験を行い、ものの表面の特徴や重さによる摩擦力で、ものの動きが変わることを理解する。摩擦力を利用した製品に触れ、身の回りの「おもりのはたらき」を知る。

授業の概要

9時間目は最初に、単元「おもりのはたらき」で学んできたことを振り返る。次に、科学者と一緒に「そもそも、ものが動くとはどういうことだろう?」と考える。そして、「すべる」というものの動きについて調べる実験を行う。定量化したデータを比較しながら、ものの表面の特徴や重さなどの条件による摩擦力の違いによって、ものの動きがどのように異なるかを考察する。

10時間目は最初に、「どうやったらすべらないだろう?」と、すべる動きを抑える工夫がしてある製品についての話を聞く。次に、実際の製品を使ってみて、日常生活で「おもりのはたらき」がどのように関係しているのかを学ぶ。さらに、技術者の技を見て、ものの動きの性質を理解することが、日常生活に役立っていることを知る。

【特別講師にお願いしたいポイント】

項目内容
特別講師にお願いしたいポイント
(本授業内容の中で、企業が関わるからこそできる点、授業の際に必ず踏まえてもらいたい点)

宮城県では、科学者と技術者の視点(理学的アプローチ・工学的アプローチ)から、「実験室から実社会へ」のつながりのある授業を提案しています。

<理学的アプローチ>

科学者が関わる意味...
・ものが動くこと・止まることについて、科学の本質的なアプローチから理解できる。
・ものの特徴とものの動きの関係を、定量化によって考察できる。
・「すべる」という動きのきまり・性質を発見できる。

● 「そもそも、ものが動くとはどういうことか?」を考え、おもりのはたらきの理解を深める。
● 精密な測定で条件設定を行い、きまりを発見できるように定量化させる。

<工学的アプローチ>

技術者が関わる意味...
・製品を作る技術を知ることで、ものの動きについてより深く理解できる。
・おもりのはたらきを知ることが、日常生活でどのように役立っているのかを知ることができる。

●「どうやったらすべらないだろう?」と、ものの動きを考慮したモノづくりをしていることを伝える。
●製品開発の紹介により、おもりのはたらきを知ることの大切さを理解させる。

【授業進行例】(45分) [9時間目 科学者が担当]

時間授業の内容・流れ
○児童の活動 ★企業講師が実施 ☆教員が実施 ▼主な児童の反応
学習のねらい必要な教具・教材
/☆留意点
導入
(10分)

○講師の方と挨拶をする。

☆ 講師の方を紹介する。 「今日は、科学者の●●さんと技術者の○○さんと一緒に、『おもりのはたらき』の授業をします。」 ★ 自己紹介する。

○今までの授業の内容を振り返る。

「これまでに、『ふりこのふれかた』や『当てられたものの動きかた』を調べる実験をして、『おもりのはたらき』について勉強してきましたね。今日は、これまでに学んだ内容にとても関係があるので、一度復習していきましょう。」
→ふりこ・衝突のきまりと性質を復習する。

○ これまでの授業で学んできた、「おもりのはたらき」の内容を振り返る。

展開1
(5分)

○科学者の話を聞く。

"そもそも、ものが動くってどういうことだろう?"
★ 科学者
「今日は、みんなと『ものが動く』ことについて考えていきたいと思います。ボールを投げたり、転がしたりすると・・・」
・ ものが動く様子について話し、ものが動くこと・止まることの不思議さに迫る。
・ 「ものが床をすべる」という動きに着目する。
   →もの・床の特徴と、ものの動きの関係。

「実は、ものが止まることは、不思議なことなのですよ。今日は、『すべる・すべらない』という、ものの動きについて実験していきましょう。科学でまず大事なのは、五感で感じることです。最初の実験では、ものを床にすべらせたときの様子を、しっかり観察しましょう。」

○ おもり(もの)の動きを「すべる」ことに着目して考える。

展開2
(10分)

○実験"すべらせてみよう!~PART1~"

★ 科学者
「『すべりにくさ』をばねばかりではかりましょう。」 
<実験の手順>
① 木片の下にゴムを取り付ける。
② 木片にばねばかりを取り付ける。
③ ばねばかりを、台車を用いて一定の速度で引っ張る。
④ 木片が動いたときの、ばねばかりの目盛りを読む。

★ 科学者 「木片をすべらせてみて気がついたことを教えてください。ばねばかりの目盛りがいくつのときに動き始めたのかを発表してください。」 →児童に観察結果を聞く。 「『すべりにくさ』がばねばかりの目盛ではかれました。 次は、ゴムの面積や、木片におもりをのせるなどして、実験条件を変えて、『すべりにくさ』をはかりましょう。」

○ ものが「すべる」動きを観察する。





○ 観察結果に加えて、実験によって明らかにしたいことを明確にする。

<使用するもの>
自走式の台車、木片、ゴム、ばねばかり

展開3
(15分)

○実験"すべらせてみよう!~PART2~"

<実験の手順>
① 木片の下にゴムを取り付ける。
② 木片にばねばかりを取り付ける。
③ ばねばかりを引っ張る。
④ 引っ張り始めたときから、3秒おきに、ばねばかりの目盛りを読んでいく。
* 結果をグラフにする。(縦軸:目盛り、横軸:時間)
* 条件を変えて測定する。
1. ゴムの面積を変える。
2. 重さを変える。
3. 木片の下の材質を変える。
4. 引っ張る速さを変える。

★ 科学者
「きちんと測ることも科学では大事です。ゴムの面積、おもさ、時間を測定して、条件によって、『すべりにくさ』がどのくらい変わるのか調べていきましょう。」

○考察

★ 科学者
「実験結果を教えてください。グラフを用いて、どんな条件のときに、時間とバネばかりの目盛りはどんな関係があったのかを発表してください。」
→児童に実験結果を聞く。
→実験結果から分かる、ものの動きの特徴を考察する。

「引っ張る速度や、ゴムの面積を変えても『すべりにくさ』は変わりませんでしたね。木片にのせる重さを変えたら、よりすべりにくくなりました。このように条件の違いによって、ものがすべる様子が随分異なることが分かりましたね。きちんと測定したので、異なる条件のものの動きを比べることができました。」

「同じ手順を踏めば、世界のどこで実験しても同じ結果が得られます。世界中の誰もがそうだって言える言葉にするのが科学の実験です。『すべりにくさ』が、材料の面積、重さや材質、引っ張る速さによって異なる・異ならない場合があることが分かりました。」

○ 変化させる条件と一定にする条件を制御し、定量化して記録する。





○ 定量化した実験結果から、ものの動きについて考察する。

○ 比較するためには、定量化が必要であることを理解する。

<使用するもの>
自走式の台車、木片、ゴム、ばねばかり、定規、はかり、ストップウォッチ、ゴム以外の素材(例:布、スポンジなど)

展開4
(5分)

○科学者の話を聞く。

"そもそも、ものが止まるってどういうことだろう?"
★ 科学者
「今日の最初に、『ものが動くってどういうことだろう?』と考えたけれど、実は『すべりにくさ』というのは、『まさつ』という力が関係しています。『まさつ』と言うのは、面と面の間にはたらく力で、ものが進む方向と逆にはたらきます。」
→摩擦力について説明する。
→科学者の実験結果のグラフを見せる。
・ 引っ張り始めてからの時間と摩擦力の関係
・ 引っ張る速さと摩擦力の関係
・ 重さと摩擦力の関係

「昔の科学者も、みんなと同じように摩擦力をはかる実験をしました。そして、摩擦がない世界では、一度動き出した物体は、永遠にどこまでも動き続けることが物体の運動の本質だということを発見したのです。」

☆「すべらせる実験をして、ものが動くこと・止まることについて勉強しました。摩擦力で、ものが止まるのですね。次の時間は、摩擦力を利用した製品を作っている技術者の○○さんのお話を聞いて、『おもりのはたらき』について考えていきましょう。」

○ 今日の実験を振り返り、おもりのはたらきを改めて知る。

【授業進行例】(45分) [10時間目 技術者が担当]

時間授業の内容・流れ
○児童の活動 ★企業講師が実施 ☆教員が実施 ▼主な児童の反応
学習のねらい必要な教具・教材
/☆留意点
展開5
(10分)

○技術者の話を聞く。

"どうやったらすべらないだろう?"
★ 技術者
「前の時間に、『すべる・すべらない』というものの動きの実験をして、摩擦について勉強しましたね。今度は、摩擦がどのようなところで役立っているのかを考えていきたいと思います。」

→摩擦について身近な例をいくつか紹介する。

「ヒトが歩いて前に進むことができるのは、地面との摩擦によって、足裏が地面をおして、地面が足裏をおすからです。...」

「地面といっても、コンクリート、氷の上、土など、いろいろなものがありますよね。先ほど実験したように、地面の特徴によって、摩擦力、つまり『すべりにくさ』が変わります。そこで、私の会社では『すべりにくい』靴を、使う場所によって工夫して作っています。」

「地面と足裏の間にある、靴の目的は、地面との摩擦によって足の裏が滑らないようにすることです。また、いかに歩きやすくするかという歩行を補助するという機能も大事になります。」

○ 「すべる・すべらない」という動きを、身近な例で考える。

展開6
(15分)

○製品を観察・使用する。

○技術者の話を聞く。
"製品紹介~どうやったらすべらないだろう?~"

★ 技術者
「では、いろいろな靴底を見てみましょう。」

→実際の製品を触ったり、使ったりして『すべりにくさ』を確認する。
★ 技術者
「製品を実際に使ってみて、気がついたことを教えてください。」
→児童に特徴や使い心地を聞く。

→製品の特徴、用途について説明する。

「この靴底は、室内履きのものですが、アスファルトなどで削れないので、素材としては、柔らかなものになっています。」

「この登山靴用の靴底は、靴底のパターンが、前にまっすぐ歩きやすいように、なっています。さらに凸凹の道でも、地面を捕まえられるように靴底のパターンも凹凸が大きくなっています。」

「この靴底はシェフが厨房で使うようのものです。厨房って水で濡れていますよね。この靴底のパターンは水があっても、滑らないようになっています。靴底に体重をかけると、水が横に逃げるような靴底のパターンになっています。さらにシェフは厨房で横に歩くことが多いので、横に足を移動しやすいような、靴底のパターンになっています。」

○ 実際の製品に触れて、摩擦力の違いを確認する。





○ 摩擦力を調節するために、製品が工夫されていることを知る。

<使用するもの>
摩擦力を利用した製品(例:長靴・タイヤなどのゴム製品)

展開7
(15分)

○技術者の技を見る。

"製品紹介~すべらないものができるまで~"

★ 技術者
「どのようにしてできるのか知っていますか?今度は、今みんなが試した製品がどのようにして作られたのかを紹介します。」

→製品・資料を用いて、アイディアから製品として完成するまでの、靴底の製作方法・技術を紹介する。

「先ほど科学者の授業でやったように、摩擦力のテストをまず繰り返して、靴底になるゴムの素材の研究をします。地面も、砂地・アスファルト・室内などいくつかの種類があるので、開発の目的に合わせて、まず素材を選びます。」

「次にいろいろな靴底のパターンをつくって、ヒトの歩行を補助するという機能をもったパターンを開発します。例えば、横にすべらないように、前に歩きやすいようにといった機能をもつパターンを開発します。」

「材質・面積という制約条件の中で、いくつかの機能を同時に持たせようと試行錯誤して、目的に一番合ったパターンが生まれます。」

「靴底は消耗品なのですが、できるだけ長く靴を使ってもらいたいので、靴底のゴムの地面との摩擦による摩耗を、最小限に抑えることも重要になります。このバランスは難しくて、摩耗しないように硬い材料を選べば、今度は歩き心地が悪くなってしまいます。機能性と耐久性を両立させることで、開発のときに頭を悩まします。」

○ 製作過程で、どのように工夫して、摩擦力を調節しているのかを知る。

<使用するもの>
摩擦力を利用した製品(例:長靴・タイヤなどのゴム製品)

まとめ
(5分)

○「おもりのはたらき」を学ぶことの大切さを考える。

☆「今日は、ゴムを使って『まさつのはたらき』について勉強しましたが、他にも『すべりにくい』工夫がされているものが、身の回りにはありそうですね。」

☆「科学者の●●さんと技術者の○○さんに、今日の授業の内容や、『おもりのはたらき』について、質問しましょう。」

→児童に、摩擦力を利用した身近なものを聞く。

→児童の発言内容について、単元の中で行った実験と関連させて、科学者・技術者の意見を聞く。

○講師の方と挨拶をする。

☆「今日は、科学者の目で、『すべりにくさ』を測る実験をし、技術者の目で、『どうやったらすべらないものができるのか』を考え、『まさつのはたらき』について勉強しました。」
▼「科学者の●●さん、技術者の○○さん、どうもありがとうございました。」

○ 身の回りの「まさつのはたらき」について考える。

○ 今日の授業を振り返り、おもりのはたらきについて改めて考える。

プログラム実施の成果・感想(「まさつのはたらき」の授業案)

単元「おもりのはたらき」においての理科実験として、本理科実験プログラムを開発した。この単元の理科実験としては、運動量の保存則をもとにした、おもりの衝突の実験や、おもりを高いところからすべらせるといったエネルギーの保存則をもとにした実験が行われている。本理科実験プログラムで提案したのは、物体の運動の導入部分として、身近な自然現象として、摩擦を取り上げた。なぜなら、保存則をもとにした実験は、ある理想的な環境を想定した上での実験なので、日常的な感覚からは、遠いと考えたからである。まず、身近な物体の運動として、摩擦がともなう現象を考察したあとに、摩擦がない条件で、物体がどのような運動を行うかを実験すれば、必然的なステップとして、「おもりのはたらき」の単元を進めていくことができる。
 工学的アプローチにおいては、身近な素材である「靴底」を題材とすることで、摩擦力の理解が深まると考えた。材質・面積という制約条件の中で、いくつかの機能を同時に持たせようと試行錯誤して、目的に一番合った靴底のパターンを開発する。この技術者の開発プロセスが臨場感とともに、子どもたちに伝わるように意図して、本プログラムを開発した。



平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」実施報告

※詳細につきましては、こちらをご覧ください

授業プログラムリスト



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