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第1回 natural science シンポジウム (2008.07.13)
Report

第1回 natural science シンポジウム(2008.07.13)
サイエンス・ライブ報告(3/3)【福島 愛】

まとめ(進行役として)

今回は五感の一つ、聴覚に着目し、参加者に「私たちがどのように音を認識しているのか」と疑問を提示した。恐らく多くの方は普段気に留めていないテーマである。参加者には私たちが音を認識していることに対して疑問を持つことに驚きを感じた方もおられるだろう。 ともあれ「どのように認識しているのか?」そして「どのようにこの疑問を解決するのだろうか?」という興味・疑問を持った方が参加されたと思われる。

参加者に対してライブを通じて、「科学とは何か?」、すなわち「科学的思考とは何か」、を端的に伝えるのが私の役目である。
参加者に伝えたい・もって帰ってもらいたいことは

 ・音が波であることを、「知識として知っている」から「納得している」にレベルを上げる
 ・科学的思考とは、仮説を立てて検証するプロセスであることを理解してもらう
 ・科学とは、一つの仮説 / 検証の上に、新たな仮説 / 検証を積み上げていくことで、問題解決に至ることを知ってもらう

の3つである。

そのために

 ・内発的動機付けのため本テーマを一度観客に自分の問題としてとらえさせたうえで、音を可視化する。
 ・仮説とその検証プロセスを披露し、なおかつ要点を整理して言語で伝える

ことを実施した。

参加者のテーマに対する動機付けのため、実際に参加者にマイクを向けて、音源定位に関する疑問を考えさせた。ライブ開始と同時に、実際に音を出し、音源定位を参加者に促した。なぜ音源の位置を同定できたのか?という問いに、「音の大きさから判断した」と理由を述べる参加者がいた一方で「なんとなくこっちかなと思った」と答になっていないことを自覚しながら答える参加者がいた。

今回は「音とはなにか?」という切り口からライブのストーリを展開させた。本ライブでは観客に音が波であるという知識を、理解するだけでなく、納得してもらうために、音の可視化を試みた。参加者が実際にアクリル管の中に音を入れ、中に一様に入れられたコルクが周期的な構造に変わった瞬間を見ることで、音が波であるという知識と経験の関連付けを行うことが目的である。また、この実験ショーにはもう一つ大きな役割がある。このときの観客の感動をトリガーにし、ライブの展開に注意をむけさせることである。観客の注意を惹きつけた状態で、実験を演出しながら科学的思考を紹介していった。

多くの科学論文の構成がIntroduction, Methods, Resultsであるように、仮説を、誰もが再現できる方法で検証するのが実験科学であり、科学的思考である。この過程を、ライブを通して観客に見せ、理解してもらうのが2つめの目的である。今回ライブで行った実験は、おおきく3つある。

仮説 方法 結果
実験1 音は波では? シミュレーションをもちいて、アクリル管の中に波を入れた様子を再現する 入った波と跳ね返った波が重なり合い、定常波ができた
実験2 右耳と左耳では音の入ってくるタイミングが違うのでは?また音の大きさが違うのでは? 2つのマイク(耳)が受信した音の波形を可視化する。 音源の移動に伴い、右と左の耳(マイク)の受信する音のタイミングや大きさが異なっていた。
実験3 私たちは音の受信時間差、および音の大きさの差を認識して音源定義をしているのでは? 左右のスピーカーの出力する音の大きさやタイミングを変化させる(体験用実験) 音の受信時間差や大きさの差で、左右の認識ができた

実験1は仮説を立てて検証するプロセスを見せることである。実験2は音の認識の理論的モデルの検証、実験3は私たちの音の認識に関する行動実験である。

一連の実験デザインは、一つの疑問「私たちはどのように音を認識しているのか?」を解決するためには、幾つもの仮説・検証が積み重ねられることを示すものである。シミュレーションは、重要なファクターだけに着目して検証する方法として用いた。論理モデルは、音の認識メカニズムの理解に大きな役割を果たしている。また人の行動・認識に関する研究では、最終的には行動実験を行うのが説得力がある。

以上のプロセスを、実演実験を参加者に体験してもらったうえで、さらに言語でも、科学が一つの仮説 / 検証の上に次の仮説を立て更に検証を行うという、実験の積み重ねでであること、具体的には今回は論理的モデルを検証して、行動実験をおこなったことを伝えた。
さらに、今回のシンポジウムで行った実験は、私たちがどのように音を認識しているのか、という問いに対する最終的な答えを出していないことも、現在解析中のデータをみせることで伝えている。この3つの実験過程で新たな疑問が生まれてきたからである。例えば、左右の耳に届くタイミングの差(音の大きさの差)・大きさの比と音源識別、差や比の大きさと私たちの左右の耳の距離の関係、頭や耳の役割、視覚情報とのかねあいなど、一つの大きなテーマ「私たちは音をどのように認識しているのか」という問いに対する答を得るには、多くの実験が必要であることが、この流れからも参加者に伝わったのではないかと思っている。

サイエンスライブの報告



Contents 第1回 natural science シンポジウム

第Ⅰ部(報告) 【文責:大草 芳江】

第Ⅱ部(意図)

第Ⅲ部(研究報告)

NPO法人 natural science

Symposium 第1回 natural science シンポジウム

第Ⅰ部(報告)

第Ⅱ部(意図)

第Ⅲ部(研究報告)

Report 活動報告

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