TOP > Activities & Reports > 学会へ行こう! > 【第1回実験報告】ゾウリムシ ー自発、自主のモデル生物(遠藤隆平)

教育プログラム開発

学会へ行こう!
【第1回実験報告】ゾウリムシ ー自発、自主のモデル生物(遠藤隆平)

<プロフィール>

遠藤 隆平(えんどう りゅうへい)
現在、東北学院大学教養学部情報科学科所属

ゾウリムシって単細胞ではもっとも進化した生き物です。

研究の目的

ゾウリムシをシャレーにあけてながめると、水溶液の中をまっすぐにすすんでいき、一瞬、とまり角度をかえて、また走り出す様子が観察される。 特に水 ゾウリムシをシャレーにあけてながめると、水溶液の中をまっすぐにすすん溶液の外側から、刺激をあたえているわけではないのにターンを繰り返しなが ら、泳いでいる。この状態をゾウリムシの自発的な行動という意味で、「自発」とよぼう。 次にゾウリムシになんらかの刺激をあたえると、ゾウリムシの応答がAとBというように2つに分かれる場合がある。集団でいうと個体差がでてくる。 同じ刺激をあたえられても、応答がことなる場合をゾウリムシの自主的な行動という意味で「自主」よぼう。 本研究の目的は、自発、自主といった生き物の基本的な性質をゾウリムシの行動を観察することで定量化し、議論する。


ゾウリムシの飼い方

1.500mlの培養瓶に切ったワラを瓶の底から2cmぐらいの厚みでしく
2. 120度、12分でオートクレーブにかける(フタはゆるめておくように)
3. 瓶の温度が十分にさがってから、 ゾウリムシを5ml程度うえつぐ


実験条件

1.ゾウリムシの培養液をロートとガーゼを使ってワラなどのゴミを濾過した
2.3V、1分の遠心分離器にかけ、密度の高いゾウリムシの水溶液を用意した

できたゾウリムシの水溶液を以下の条件で観察した

1.自然な状態におけるゾウリムシ
2.酢酸ナトリウムの水溶液を用意し、ゾウリムシの水溶液に滴下した

0.1M 500mM 250mM 125mM の濃度の酢酸ナトリウムをマイクロピペットを用いて滴下した。


実験結果と考察

1.自然の状態におけるゾウリムシ

図2の様に2種類の水量におけるゾウリムシを観察した。シャーレの縁につかないように中心に置いた水適量と、縁につくように置いた水60μを観察した。またゾウリムシの密度が濃い水を用意することで各環境の中でのゾウリムシの分布の違いを見ることを狙った。2種類の環境を観察した結果、シャーレの中心に置いた水中のゾウリムシは、表面張力によって丸まった部分にはほぼ分布せず、水と空気との境界を嫌うかのように移動していた。また、中心にいくほど多く分布しているというわけでもなく、ドーナツ状に多く分布していることがわかった。それに対しシャーレの縁につくように置いた水中のゾウリムシは、縁沿いに多く分布していた。つまり水とプラスチックとの境界を好むように移動していることがうかがえた。このことから、水と空気との境界を察し、その境界線を超えれば“陸”であると危険察知して絶えず移動しているのではないかと考る。


2. 酢酸ナトリウムの水溶液を用意し、ゾウリムシの水溶液に滴下

a.0.1molの酢酸ナトリウムを10μゾウリムシ、水共に目だった変化なし

b.0.05molの酢酸ナトリウムを20μ滴下した中心部を避けるようにゾウリムシは移動。
中心部のゾウリムシは若干移動が早くなった。

c.0.025molの酢酸ナトリウムを40μl滴下
全体的にゾウリムシの動きが速くなった。ゾウリムシは頭を細くして素早く移動する様子がはっきり伺えた。
また、死骸がでてきた。

d.0..125molの酢酸ナトリウムを80μl滴下
全体的にさらに動きが速くなった。
死骸が5,6箇所に集まっていた。


3.考察

水とプラスチックとの境界、水と空気との境界におけるゾウリムシの分布が明らかに異なっていた。これは水とプラスチックとの境界ならば水の外に出る恐れはないが、水と空気との境界を越えれば死んでしまうということを表面張力により丸まった水を感知して境界に行かないようにしていたのではなかろうか。 また、水とプラスチックとの境界だけではなく、物質的に異なる境界をつくることで分布の違いが見えてくるかも知れない。



ゾウリムシ


※「学会へ行こう!」プロジェクトの概要はこちらをご覧ください