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multifractal(マルチフラクタル)概説

文責:遠藤 理平 (2008年12月15日) カテゴリ:TIPS 集(99)

multifractal 構造

multifractal 構造をもつ集合の代表として,図\ref{Cantor}のようなCantor setを考える.


Cantor set(\label{Cantor})

この集合は$l_1 + l_2 < 1$としたとき,$1$の長さの線分からそれに含まれる部分をくり抜いて,$l_1とl_2$の部分だけを残す場合を考える. これを$n$回繰り返して得られる集合を,第$n$世代の Cantor set と呼ぶことにする. この集合は場所によって線分の長さが違っている. さらに第n世代の Cantor set 各区間 $I_i$($i = 1,2,\cdots N_n, \; N_n = 2^n$)に適当な規則により確率$p_i$付与する. 定義により,$\sum_ip_i = 1$となる. 極限として得られるこのような集合を特徴付けるために,局所次元 $\alpha$ と $f(\alpha)$という量を導入する. この解析方法は,1987年にT. C. Halseyらによって考案され[1],{\bf $f(\alpha)$--spectrum}の方法として知られている. さらにM. Kohmotoによって,上記の量を熱力学関数と対応をつけて定式化された[2].

ここでは,集合全体の特徴を定量的に表す{\bf 一般化次元$D_q$}と, 局所的な集合の特徴を表す{\bf 局所次元(singularity) $\alpha$}が$f(\alpha)$という量で関係付けられることを簡単に示す.

始めに,$l_1 = l_2 = \cdots = l_{N_n}\equiv l^{(n)}$である場合の一般化次元$D_q$を次のように定義する:


\label{C.19}

$D_q$は$q$の値によって,いろいろな種類の次元を包括している:

容量次元$D_0$,情報次元$D_1$,相関次元$D_2$,$\cdots$と,$D_q$はよく知られた次元を$q$という量で統一的に表すことができる.

しかし(\ref{C.19})式では図\ref{Cantor}のような線分の長さが場所によって異なった集合には,このままでは適用ができない. そこでこれを拡張するために次の量を導入する:


\label{C.20}

$q$を決めて両辺$n\to \infty$の極限をとったときに,右辺は $\beta$ がある値以下ではゼロに収束するが,その値を超えると発散する. その境界における $\beta$ の値を$\beta(q)$ と記し,拡張一般化次元$\tilde{D}_q$ を関係式 $\beta(q) = (1 - q)\tilde{D}_q$ により定義する. 一般に$\tilde{D}_q < D_q$を満たしている.
また,幾何学的な構造のみに着目する場合には$p_i = 1/N_n$(一定)とすればよい. 詳しい計算は参考文献\cite{6},\cite{7}にあるので,本稿では結果だけを記すことにする.

局所次元 $\alpha$ という量を確率測度$p_i$に対して定義する:

また,multifractal 解析でもっとも大事な関数に$f(\alpha)$という関数がある. この量はある集合のうち局所次元が $\alpha$ である部分集合の容量次元を表している. $\alpha$ と$q$の関係は

で与えられる.ただし,右辺を計算した後で,$\beta = \beta(q)$ とおくものとする. さらに,$f(\alpha)$は拡張一般化次元$\tilde{D}_q$とは次の関係式により結ばれる:

$\alpha$ と $f(\alpha)$は$q$の関数として,自己相似構造をもつ集合(1次元)の各線分$l_i \ (i = 1,2,\cdots)$が与えられたときに, $q$の値に対してそれぞれ定量的に求められる. 逆に,$\alpha$ と $f(\alpha)$に対して,対応する$\tilde{D}_q$が決まる. 図\ref{Cantor}の Cantor set で,$l_1 = \frac{1}{4}, l_2 = \frac{1}{2}$として計算した結果が図\ref{Cantor1}である.


Cantor setの $f(\alpha)$--spectrum}(\label{Cantor1})

$f(\alpha)$は$q = 0$で最大値$f(\alpha) = \tilde{D}_0$をとり,$q\to \infty$のときに $\alpha_{\rm min}$で$f(\alpha) = 0$, $q\to -\infty $のときに $\alpha_{\rm max}$で$f(\alpha) = 0$である上に凸の関数となる. 図\ref{Cantor}の Cantor set では,局所的に連続的である($\alpha = 1$)部分から $\alpha = 0.5$で表される部分まで, 図\ref{Cantor1}のように分布していることを表している.

[1] T. C. Halsey, M. H. Jensen, L. P. Kadanoff, I. Procaccia and B. I. Shraiman Phys. Rev. A 33, (1986) 1141
[2] M. Kohmoto Phys. Rev. A 37, (1988) 1345

今後の予定

■ multifractal の導出
■ 様々な集合のmultifractalの解析を行なう



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