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働きアリの利他性

文責:八重樫 和之 (2009年6月10日) カテゴリ:

社会性昆虫に関する基礎知識をまとめる

生態学における真社会性の定義

生態学では複数の個体が共同で繁殖し、繁殖する個体と繁殖しない個体という分業が見られる状態を本当の社会性という意味の真社会性と定義する。この生殖的分業はあらかもヒトの社会のカースト制度のようにも見えるため、昆虫学では繁殖カースト、非繁殖カーストなどという擬人的述語さえ使われている。非繁殖カーストは不妊個体なので敵と討ち死にしようがしまいが自然淘汰上は死んでいるも同然である。

アリのようなカーストはなぜ存在しているのか?

明らかに社会性の中でしか生きられないのが不妊カーストの存在だ。 ダーウィンの唱えた自然淘汰による進化は以下の通りである。

  • ・個体変異(個体間の違い)
  • ・淘汰(生存・繁殖の差)
  • ・遺伝(遺伝的な個体変異)

上の3つすべてが成立すれば親の世代で生存や繁殖に優位であった形質が次の世代に子を残す。 しかし、ワーカーは自ら子を残さない。これらの不妊個体は形質を次世代に伝える術となる子を持たない。なぜこのような形質が進化し得たのか、この矛盾にダーウィンは大いに悩んだ。

血縁淘汰と群淘汰のモデル

プライス則からハミルトンの不等式の導出

プライス則とは淘汰による集団の遺伝子頻度の変化は遺伝子型x と相対適応度w の共分散なので一般に表現できるとするものだ。

yaegashi_090610_eq1.gif

遺伝子型xは2倍体生物においては

  • ・ヘテロ接合を持つ場合:0.5
  • ・ホモ接合を持つ場合:1
  • ・持たない場合:0

となる。 相対適応度wは世代が重複しないか個体が一定の集団では個体が残した生殖齢にまで達したこの数をその集団平均で割ったのもである。平均値は1となる。

血縁淘汰モデル

血縁淘汰の公式であるハミルトン側は以下のように導ける。個体の適応度w は個体自身 の遺伝子型x のみならず, 相互作用する他個体の遺伝子型の影響を受ける。ここで自分が利他的ならその程 度に比例して適応度をc 減らし、逆に相互作用する他個体の遺伝子型平均値x' が利他的ならば, その程度に 比例して比率b で適応度が上昇すると想定する。a は定数で自分も相手も利他的でないときの適応度すると 個体の適応度は以下のように表現できる。

yaegashi_090610_eq2.gif

式(2) を式(3) に代入すると

yaegashi_090610_eq3.gif

この遺伝子が頻度を増やす。すなわちΔX > 0 とし、両辺を集団の遺伝子型分散V(x)(符号は正) で割れば

yaegashi_090610_eq4.gif

これがハミルトン則の不等式である。ここでCOV(x,x')/V(x) で定義される量が血縁度r である。利他的性質はbが大きくcが小さいほど進化しやすい



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