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週末科学実験講座
音ってそもそもなんだろう?~電子ピアノをつくろう~報告書

文責:渡辺 慶太郎 (2012年3月19日) カテゴリ:入門編(25)

本講座は1月14日から3月3日の間、毎週土曜日の13時から15時まで、FiveBridge(仙台市青葉区北目町4-7 HSGビル3F)において、全5名の参加者で行った。なお、授業に参加できなかった生徒には、翌週に2時間の補講を行った。

講座の目的

本講座は、各部品や回路のはたらきを理解した上で、 音階をもつ電子ピアノの製作と調律を通じ、音階と波形の関係を目と耳で理解することを目的として行った。


本講座の具体的方法

上記の目的を達成するために、講座を次の4つのステップで実施した。

ステップ1:
工具の使い方や作業環境の整理整頓など、ものづくりにあたっての心得を学ぶ(1回目)

・はんだごての高温部や鋭利な工具等、怪我の原因となる要素を認識する。
・手元の作業スペースを常に確保し、危険を排除しつつはんだづけに集中できる環境をつくる。
・電子工作の基本技術であるはんだづけの練習を行う。
・配線を行うための、工具(ニッパー、ラジオペンチ)の使い方を学ぶ。

ステップ2:
電子ピアノの構成部品のはたらきを知り、電子ピアノの動作原理を理解する(2~4回目)

・2回目:抵抗が電流を制限するはたらきを、数種類の抵抗とLEDを用いた回路により目で理解する。
・3回目:ICがもつ、電流のON/OFFを切り替えるはたらきを目で理解するために、LEDの点滅回路をつくる。さらに、抵抗を入れ替えることで、その点滅速度(周波数)が変化することを理解する。
・4回目:スピーカーがもつ、電流のON/OFFを音に変えるはたらきを耳で実感するために、ブザー回路をつくる。3回目までに得られた知識をもとに、ブザーの音の高さを変化させられることを理解する。
・5回目(前半):半固定抵抗の抵抗値を調整できるというはたらきを、LED点灯回路により目で理解する。

ステップ3:
音階をもつ電子ピアノを製作する(5,6回目)

・1~4回目までに得られた知識や技術を応用し、電子ピアノ製作を行う。

ステップ4:
音階と波形の関係を目と耳で理解する(7,8回目)

・7回目:耳による調律を行い、人間の聴覚だけに頼った調律の精度を実感する。
・8回目:オシロスコープを用いて調律を行い、波形と周波数(音の高さ)の関係を理解する。また、人間の聴覚に頼った調律と機械を利用した調律の精度を比較する。


本講座で使用した電子ピアノのしくみ

 本講座のために設計した電子ピアノの動作原理は、ICに抵抗とコンデンサをつないだ発振回路から発生させた電気信号を、スピーカーにより音に変換する、というものである。
 電子ピアノの音の高さは、抵抗値とコンデンサの容量により決めることができる。


本講座の実施内容

1回目

 はんだづけの練習と工具の扱い方、そして電子工作をする上での作業環境について実践的に学んだ。また、その学習内容を確認するために、LEDライトを製作した。
 受講者は初め工具の扱い方に苦戦していたが、最後にはLEDライトを全員完成させることができた。


2回目

 抵抗の電流を制限するはたらきを、複数の種類の抵抗を用いた回路で学んだ。また、スイッチのはたらきを学んだ。
 抵抗のはたらきを理解するための回路は全員が完成させることができた。スイッチのはたらきを理解する回路は時間内では1名完成させることができなかったが、予備の回路を用いることで理解してもらうことができた。


3回目

 ICのはたらきを学んだ。回路には受講者によって違う種類の抵抗を用い、お互いの回路を見比べることで、抵抗値が大きくなるとLEDの点滅速度が遅くなるという関係を目で見ることで実感した。
 回路は時間内では2名完成することができなかったが、他の受講生の回路を用いてはたらきを理解することができた。


4回目

 スピーカーのはたらきを学ぶためにブザー回路を製作した。そのため、3回目のLED点滅回路のLEDをスピーカーに交換するとスピーカーから音が生じる。

 音の高さはICにつなぐ抵抗の値できまる。そこで、耳で聴いたスピーカーの音から抵抗値を予想するゲームを行い、抵抗値が大きくなるとブザーの音が低くなることを耳で実感した。ゲームの正解率は人により異なっていたが、抵抗値と音の高さの関係については全員が理解することができた。


5回目

 半固定抵抗のはたらきを学ぶ回路を製作し、配布した回路図および配線図をもとに電子ピアノの製作を行った。 受講者はこれまでに得た知識や技術を活かし、電子ピアノの製作を順調に行っていた。


6回目

 前回に引き続き、配布した回路図および配線図をもとに電子ピアノの製作を行った。受講者のうち、欠席した1名を除いた全員が電子ピアノをスムーズに完成させることができた。


7回目

 電子ピアノの耳による調律を行った。受講者は、全員十分な時間をかけて調律に取り組み、人間の感覚に基づいた調律の難しさを実感してもらった。


8回目

 オシロスコープに電子ピアノを接続して調律を行い、音階が高くなるとオシロスコープに現れる波の数が増えるということを目で見て実感した。
 全回出席していた受講者は、全員がこのことを実感することができ、調律の結果納得のいく音を出すことができた。 また、欠席した回のあった受講者1名についても、この日までに電子ピアノ回路を完成させ、音階と波形の関係について理解してもらうことができた。


本講座のまとめ

 8回目に受講者全員が電子ピアノの調律を独力で成功させることができたことから、受講者全員が本講座の目的である音階と波形の関係の理解をすることができたといえる。
 また、特に4回目の抵抗当てゲームや、7・8回目の授業においては、講師が指示をしなくても受講者が互いに声を掛け合いながら課題に取り組む姿が見られた。協力の重要性を自ら発見してくれたという予想以上の意義がある講座であった。

本講座の課題と今後に向けて

①3回目の回路の故障などのトラブルは、半田づけの技術習得が1回目に充分にできていなかったためだと考えられる。2回目以降にも半田づけの練習を取り入れるなどして、さらに技術の基礎を固めさせたい。

②電子工作の経験者は課題をこなすスピードが速かったため、経験者向けの発展課題をより多く準備しておくと幅広い層の受講者を迎えることができるのではないかと思った。



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