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若手研究者と学生主体のNPO法人 natural scienceの取組み

文責:大草 芳江 (2008年10月15日) カテゴリ:日本物理学会(2008.09)(5)

 会員数約2万人と日本最大規模を誇る日本物理学会では、国内の大学を会場として、毎年、春と秋に全国規模の学術講演会を開催しています。素粒子・核物理・宇宙線などの6領域と、物性を中心とした13領域があり、全国から集まった約5000 人の研究者たちにより、3,600件におよぶ講演と討論が行なわれます。
 9月20日(土)から23日(火)まで、岩手大学上田キャンパスにて開催された、日本物理学会・秋季大会(領域13)にて、「若手研究者と学生主体のNPO法人 natural scienceの取組み」を講演して参りました。
 講演では、「第1回 natural science シンポジウム」を具体例に、「natural science」の活動の前提となるスタンスについて説明しました。
 質疑応答は講演終了後も約20分ほど続き、また、日本物理学会が発行する「大学の物理教育」誌へもnatural scienceの取組みを執筆することになりました。

「natural science」とは?

 わたしたち「natural science」は、「科学」のもつ様々な可能性を模索し、「科学」を切り口とした地域づくりを目指す、組織の枠を超えた若手研究者・学生主体のNPO法人です。仙台・宮城を拠点として活動しているため、東北大学、東北工業大学、理化学研究所、東北学院大学などの研究機関に所属する若手研究者や学生が中心の組織ですが、それだけでなく、日本ナショナルインスツルメンツやアルプス電気など、企業の方やOBの方も活動に参加しています。

「natural science」が生まれた社会的背景

 そもそも「natural science」ができた社会的な背景として、現代社会は、いわゆる「役目・役割」の社会。組織として成果を挙げるためには、それぞれが役目・役割をしっかりと果たすことが求められています。しかしながら役目・役割を要請されればされるほど、わたしたちは、役目・役割ではない「個」由来なもの、すなわち内発的動機で力を発揮できる場を、強く求めるようになります。そのような現状に対して、我々は、役目・役割ではない、交換不可能な「個」をスタート地点にして、社会との接点を持つ場をつくりたいと願い、「natural science」は生まれました。

「個」からスタートした研究が、幅広いネットワークをつくる

 まずはじめに若手研究者らによる週末研究が始まりましたが、「個」の素朴な興味からスタートした研究は、既存の研究機関からも着目され、現在は、東北工業大学、東北大学電気通信研究所、東北学院大学教養学部、東北大学理学部、宮城教育大学教育学部、東北大学工学部など様々な研究機関との共同研究や、㈱仙台測器社、日本ナショナルインスツルメンツ㈱、㈱マグファインなどの企業から研究協力を頂けるようになりました。また、ロボットを用いた電子工作教室「科学実験工作教室~ロボットへの道~」や、自然の中で行う科学教室「体験型自然科学の教室」、高校生・大学生主体の「国際学会へ行こうプロジェクト」など、若手研究者だけでなく、学生らも試行錯誤の中で、自らの興味から出発した研究開発を行っています。

「個」からスタートした取組みと社会の接点:「natural science シンポジウム」

 さらに今年の7月は、「個」からスタートした取組みと、明示的な社会との接点の場として、「第1回 natural science シンポジウム」を東北大学片平さくらホールにて主催しました。シンポジウムでは、「natural science」がこれまで研究開発してきた成果を、研究プロセスを疑似体験できる「サイエンスライブ」や、「科学実験教室」、地域の企業や研究所9ブースが出展した「地域の科学や技術とゆるやかにつながるCAFE natural science」などの形で発表しました。

 本シンポジウムのテーマは、「科学って、そもそも何だろう?」。参加する若手研究者・学生や出展者らが、この原点に立ち戻り、協働でコンテンツを考え、準備を進めてきました。参加した企業や研究所も、普段のような組織の役目・役割から入るのではなく、それ以前に組織の中で働く個人が「面白い」と思うものからスタートしたコンテンツを、「natural science」の学生らとの協働でつくったケースも見られました。

 来場者からは、「ただ話を聞くだけでなく、これだけの種類を体験できて、とてもおもしろかった」、「分野がバラバラだったのが非常に良かった」、「普段親子連れで来ても、低学年の妹が楽しめない場合が多いのだが、このイベントでは、幼児から大人まで楽しめた」などの声を多く頂きました。アンケートからも、老若男女問わず、満足度の高いイベントを開催することができたことがわかりました。また、企業や研究所などの出展者からは、「面白みを確認したい・追求したいと思っている社長さん達が、参加しているのだと感じた」、「普段の事業の意義を再認識し、さらに来場者に理解してもらえて嬉しかった」などの声が聞かれました。

「個」からスタートした取組みは、新しいコミュニティ形成の原動力に

 これらはすなわち、組織の「役目・役割」から入るのではなく、直感的に「個」が面白いと思ったものからスタートするものは、年齢やジャンルの壁を超え、新しいコミュニケーションやコミュニティを形成する原動力となることを示していると考えます。それらが結果的に、科学コミュニケーションやCSRという概念に結びつくのではないでしょうか。

「natural science」のこれから

 約3年間の活動を通じて、「個」からスタートする取組みの共通項として「科学」は有効であることを実感しています。今後の具体的な予定としましては、本シンポジウムを更に発展させ、「ストリート・サイエンス・フェスティバル in SENDAI(仮)」なるものを開催したいと考えています。より多くの企業や研究所が参加する、繁華街での一大科学イベントです。わたしたち「natural science」は、「科学で地域づくり」をスローガンに、これからも活動を続けて参ります。



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