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平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」
【授業タイトル】大地のつくり(6年生)

文責:大塚 富美恵 (2008年11月27日) カテゴリ:経済産業省「理科実験プロジェクト」(2007年度)(16)

【協力企業】大和ハウス工業株式会社 仙台支店

【授業のねらいと概要】

項目内容
授業のねらい

大地を構成しているものの性質を理解するとともに、大地を知る方法や、大地を知ることが実社会にどのように役に立っているのかを知る。

授業の概要

1時間目は、はじめに「そもそも、土とはなんだろう?」と考え、大地を構成している土は、場所によって色や形、手触りなどが違うことを知る。そして、これらの土の種類の違いを土のはたらきの一つである「給水機能」に着目して実験を行う。科学者と一緒に、誰もがそうだと納得できる科学の言葉に(定量化)していき、土の種類の違いによって、どのくらいはたらきが異なるのかを比較する。

2時間目は、はじめに、普段は見ることができない地下の様子を知るために必要な、ボーリング調査について学ぶ。そして、地下の土の成分や性質を調べるために、さまざまな機械が使われていることを知り、特に重要な土のかたさを測る実験方法や測定値の読み方を理解する。その後、複数のボーリング試料を、見た目や手触り、かたさの値(N値)などで比較する。さらに、技術者がボーリング調査の結果を利用して、建物を建てている話を聞く。

【特別講師にお願いしたいポイント】

項目内容
特別講師にお願いしたいポイント
(本授業内容の中で、企業が関わるからこそできる点、授業の際に必ず踏まえてもらいたい点)

宮城県では、科学者と技術者の視点(理学的アプローチ・工学的アプローチ)から、「実験室から実社会へ」のつながりのある授業を提案しています。

<理学的アプローチ>

科学者が関わる意味・・・
・大地のはたらきを、より深く理解できる。
・大地を観察して気がついたことをさらに追及することで、土のはたらきを発見できる。
・種類が異なるさまざまな大地の特徴を、定量化によって比較できる。

● 「そもそも、土とは何か?」を問いかけ、土にはさまざまなはたらきを持っていることを発見する。
● 土のはたらきを実験し、土の種類とはたらきの関係を調べる。

<工学的アプローチ>

技術者が関わる意味...
・大地を知るための技術や、調査結果を利用した技術に触れられる。
・大地を知ることが、生活に役立っていることを理解できる。

●「どうしたら、よいものができるのか?」という技術者のアプローチ(仕事)を紹介することを通して、大地を知ることの大切さを実感させる。

【授業進行例】(45分)[1時間目 科学者が担当]

時間授業の内容・流れ
○児童の活動 ★企業講師が実施 ☆教員が実施 ▼主な児童の反応
学習のねらい必要な教具・教材
/☆留意点
導入(5分)

○講師の方と挨拶をする。

☆ 講師の方を紹介する。
「今日は、科学者の●●さんと技術者の○○さんと一緒に、『大地のつくり~土壌の性質をしろう!~』の授業をします。」
★ 自己紹介する。

○科学者のお話"そもそも土ってなんだろう?"を聞く。

★ 科学者
「今日は、みんなと土について考えていきたいと思います。川やグランド、森の土をよく見ると、灰色だったり、黒だったり、白っぽかったりして、場所によって色が違います。触ってみても、サラサラしたり、ザラザラしたり、ねばねばしたりしています。...」

→科学者が見た土の世界を紹介する。野外に出かけて五感で感じたこと・実験室の顕微鏡で観察したことから分かったことを伝える。

「...どうしてサラサラしたり、ザラザラしたり、ねばねばしたりする違いがあるだろう?と思い、顕微鏡で見てみたら、手の感触の違いは、粒の大きさの違いだと分かりました。...」

→観察結果から分かったこと・分からなかったことを整理し、実験でやりたいことを伝える。

「...でも、川の土が『サラサラ』と言っても、他の人は『ザラザラ』というかもしれません。世界中の誰もがそうだって納得できる科学の言葉で表現できるようにしましょう。」
「手触りの違いが粒の大きさによることが分かりました。では、この粒の大きさの違いで、土のはたらきがどのように変わるのか実験しましょう。」









○ 見たり、触ったりして分かったことから、土の特徴を知る。

○ 観察結果に加えて、実験によって明らかにしたいことを明確にする。

展開1
(10分)

○予備実験「土の給水機能を調べよう!」

★ 科学者
「土に水がしみこむことを知っていますか?実験でその土はたらきを調べていきましょう。まず、科学で大事なことは量を決めることです。土と水の量をしっかり測ってください。」
→演示実験をしながら説明。

「科学の実験には、予備実験が必要不可欠です。失敗してもいいけど、なぜ上手くいかなかったのかはよく見てください。本実験に備えて、実験方法をマスターしましょう。」

<実験の手順>
① 試験管に12ミリの目盛りまで砂を入れる。
② 脱脂綿でふたをする。
③ アルミの棒に試験管の穴をあけた部分を通す。
④ 容器に水を下から6cmの高さまで入れる。
⑤ アルミの棒を容器に引っ掛ける。

  

★ 科学者
→実験開始の合図(手順⑤)を行う。
▼「上昇してきた。
」 ▼「しみこんでいる。」
▼「きたきたきたー!!」
▼「すごーい。」

○考察

★ 科学者
「予備実験の結果を教えてください。水はどこまでいきましたか?」
▼「一番上までいきました。」
★「一番上まで到達する様子は、はやいと思いましたか?遅いと思いましたか?」
▼「はやいと思いました。」
★「みんなはやいと答えてくれたけど、はやい・遅いと言っても、誰もが共有できる言葉にはまだなっていません。本実験で、科学の言葉にしていきましょう。」

○ 土が水を吸い上げるはたらきを確認する。

○ 実験条件をそろえる必要性を理解する。




○ 比較するためには、定量化が必要であることを理解する。

<使用するもの>
試験管(使い捨て用、3つ穴をあけておく)、脱脂綿、アルミの棒、容器、定規、ビーカー、水、砂

展開2
(25分)

○本実験「土の給水速度を測定しよう!」

★ 科学者
「土の量・水の量・時間をはかって、10秒間で水がどの目盛りまで吸いあがるかを調べていきます。」
→演示実験をしながらグラフの描き方を説明。

「砂・油かす・礫の3種類の土で実験します。砂と油かすは材質が違うけど、粒の大きさは一緒です。砂と礫は、粒の大きさが違うけど、材質は同じです。予備実験で試した砂よりも、はやいか遅いか予想して実験してください。」

<実験の手順>
① 3本の試験管に12ミリの目盛りまで砂・油かす・礫をそれぞれ入れる。
② 脱脂綿でふたをする。
③ アルミの棒に試験管3本を通す。
④ 容器に水を下から6cmの高さまで入れる。
⑤ アルミの棒を容器に引っ掛ける。
⑥ 10秒ごとに、水が吸いあがっている目盛りを測定する。

★ 科学者
→実験開始の合図(手順⑤)、時間の計測(手順⑥)を行う。
▼「今上がった!」
▼「全然進んでない。」
▼「遅いなぁ、何で?」
(「120秒でも、まだちょっとだけ上がっているよ。」

  




○ 3種類の土の違いを明確にし、土のはたらき(給水速度)の仮説を立てる。

○ 土の種類の違いによるはたらきの違いを、定量化する。

<使用するもの>
試験管(使い捨て用、3つ穴をあけておく)、脱脂綿、アルミの棒、容器、定規、ビーカー、水、砂、油かす、礫
展開3
(5分)

○考察

★ 科学者
「何が一番はやかったですか?」
▼「砂が40秒でした。」
★「みんなの予想とはどうでしたか?」
▼「礫が一気にいくと思ったけど、全然上がりませんでした。」
★「なぜそう予想したのですか」
▼「隙間がいっぱいあるから、すぐに上がると思いました。」
→3種類のグラフの結果を発表する。
★「水面に土をつけた時間をゼロとし、何秒で、何cm水面があっていったかを見てください。それぞれの土の種類で、水面の上昇速度はどのように違うでしょうか?」
→グラフを詳しく分析する。

  

★ 科学者
「砂が一番はやく水を吸い上げ、油かすと礫の水の吸い上げは遅かったよね」

「砂と油かすは材質が違うけど、粒の大きさは同じ砂と油かす、粒の大きさが違うけど、材質は同じ砂と礫。土の量や時間という条件をきちんとそろえたから、土の粒径と材質の違いによる給水という土のはたらきの違いを比べることができました。この実験データは、同じ手順を踏めば、世界のどこで実験しても同じ結果が得られます。」

「世界中の誰もがそうだって言える言葉にするのが科学の実験です。今日は水を吸い上げるという土のはたらきが、土の種類の違いで、どのように違うのかがわかりました。
「そもそも、土ってなんだろう?」という自然の現象に対する興味から出発し、ものの種類とはたらきに関係性を見いだしていくこと、それを科学の言葉で語ること。今日はみんなで科学のプロセスを実行しました。」

○ 定量化した実験結果から、3種類の土のはたらきの違いを比較する。




○ 実験条件をそろえることの重要性を知り、改めて土について考える。

【授業進行例】(45分) [2時間目 技術者が担当]

時間授業の内容・流れ
○児童の活動 ★企業講師が実施 ☆教員が実施 ▼主な児童の反応
学習のねらい必要な教具・教材
/☆留意点
導入
(5分)

○講師の方と挨拶をする。

☆ 講師の方を紹介する。
「今日は、科学者の●●さんと技術者の○○さんと一緒に、『大地のつくり~土壌の性質をしろう!~』の授業をします。」
★ 自己紹介する。

○科学者のお話"そもそも土ってなんだろう?"を聞く。

★ 科学者
「今日は、みんなと土について考えていきたいと思います。川やグランド、森の土をよく見ると、灰色だったり、黒だったり、白っぽかったりして、場所によって色が違います。触ってみても、サラサラしたり、ザラザラしたり、ねばねばしたりしています。...」

→科学者が見た土の世界を紹介する。野外に出かけて五感で感じたこと・実験室の顕微鏡で観察したことから分かったことを伝える。

「...どうしてサラサラしたり、ザラザラしたり、ねばねばしたりする違いがあるだろう?と思い、顕微鏡で見てみたら、手の感触の違いは、粒の大きさの違いだと分かりました。...」

→観察結果から分かったこと・分からなかったことを整理し、実験でやりたいことを伝える。

「...でも、川の土が『サラサラ』と言っても、他の人は『ザラザラ』というかもしれません。世界中の誰もがそうだって納得できる科学の言葉で表現できるようにしましょう。」
「手触りの違いが粒の大きさによることが分かりました。では、この粒の大きさの違いで、土のはたらきがどのように変わるのか実験しましょう。」








○ 見たり、触ったりして分かったことから、土の特徴を知る。

○ 観察結果に加えて、実験によって明らかにしたいことを明確にする。

展開4
(5分)

☆ 1時間目の授業の内容を振り返り、2時間目のねらいを伝える。

「先ほどは、科学者の目で大地のつくりについて勉強しました。今度は、技術者の目で、大地のつくりを知ることがどんなことに役立っているのかを学びましょう。」

 →企業の紹介、家つくりに関わる仕事の紹介をする。

○技術者のお話

"地層を知るには?~ボーリング調査の紹介~"を聞く。
★ 技術者
「1時間目に実験したように、科学者は誰もが分かるように、日本全国同じ基準で、土についていろいろと調べてくれます。私は、その結果を使って、家を建てています。」
「地面に出ている土は取れますね。でもすごく深いところにある土はどうやって取れるのでしょうか?これからその調べる方法を紹介したいと思います。」
→ボーリング調査の方法を、資料や実際に使っている機具を見せながら紹介する。
・ ボーリング調査とは、管を回転させて孔を作ること。
・ 土のかたさを考えながら掘り進めていくことが重要である。
・ 先端に硬い金属が埋め込まれている機具で削っていき、下に重要なものが埋まっているときは、プラスチックのドリルを使う。

  

「先ほどの実験では、土が水を吸うはたらきについて調べましたね。ボーリング調査では、土を掘った後に、土の硬さについて調べます。土のかたさは、土の種類の違いや水をどのくらい吸っているかによって決まります。」
→土のかたさの調べ方を紹介する。
・ 1mごとに調べる。
・ 日本全国で同じ基準のおもり(63.5kg)を75cm上げて、土が30cmへこむまでの回数 「N値」を測定する。
★「N値0(ゼロ)ってどういうことかわかりますか?」
▼「1回もやらない。」
★「そうです。おもりを置いただけで、土の中にずぶずぶっと入っていきます。」




○ 地層を知るためには、どんなことをする必要があるのかを知る。





○ 1時間目に学んだ、土と水の関係を振り返り、ボーリング調査で重要になる点を理解する。


○ 調査した結果は決まった基準で表す必要があることを知る。

<使用するもの>
ボーリング調査の機具
☆重たいので、観察するときにけがをしないように注意する。

展開5
(15分)

○観察"ボーリング試料を見よう!"

★ 技術者
「それでは、ボーリング調査で取れた地層を観察してみましょう。ラベルに深さ・地質・N値・採取日時が表示してあります。」
「あけてみて、触ったり、においを嗅いでみたりしてください。」
「指で押してみてください。ぎゅーっとつぶれる土と、つぶれない土がありますよ。」
「地面が深いところの土は、ちょっと臭いかもしれませんね。」

  

▼「炭のにおいだ。」
▼「固まっている。」
▼「すごい!0回で30cmだ。」
▼「硬い。石だよ、石。」
▼「1回?2回?3回で30cmか!」
▼「貝殻入りだ。」
▼「木の匂いって感じがする。」
▼「かなりくさい。」

  

★ 技術者
「今観察したボーリング試料の調査位置は、『大和町内の内陸』と、『多賀城の海側』です。貝殻が含まれている試料がありましたね。これは多賀城の地層です。大昔は海だったということが調査によって分かります。このように、ボーリング調査によって、土の性質だけでなく、大地の歴史を知ることができます。」

○ ボーリング試料の見方を知る。

○ 試料を見ながら、どのような地層であるのか、判断できるようにする。

<使用するもの>
ボーリング試料

展開6
(15分)

○技術者のお話"家つくりと大地の関係"を聞く。

★ 技術者
「土のかたさ『N値』は、土を掘りながら調査するとお話しましたが、土を取り出した後も、土の強さを知るために、実験室でありとあらゆる試験を行います。そして、建物を建てるときに活用します。」
「コンピュータ上で建物の構造計算をします。まず、マンションの重さと土のかたさを計算します。次に、建物をグラグラさせて、地面に対してどのような力がかかるかを調べます。」

→構造計算の説明後、実際に完成した建物の写真・図を見せながら、建設の過程を紹介する。
・ 秋田県の14階建てのホテル
・ 基礎の部分の杭...直径2m、長さ34m(←かたい地盤が出てくる深さ)
「建物は完成するまでに、どんどん重くなっていくので、地盤がやわらかいと建物を支えられません。杭を打って倒れないようにするために、地盤の調査はとても大事になってきます。」
「足腰がしっかりしていないと、みなさんは体を支えられないのと同じで、建物も支える部分をしっかり作らなければいけません。」

「ところで、ピサの斜塔はどうして斜めなのか知っていますか?」
▼「地盤がやわらかいからです。」
★「そうですね。調査したこちら側は硬かったけれど、しなかった方はやわらかかったのです。左右で地盤の硬さが同じじゃなかったので、作っている途中で傾いてしまいました。」
「今は斜めでも、コンクリートで固めてとまっています。でも傾いている建物の中にいると気持ち悪くなりそうですね。こんな例からも、大地を知る大切さが分かりますね。」

○ボーリング調査の結果が、どのように生活に役に立っているのかを理解する。

まとめ
(10分)

○大地のつくりと変化について学ぶことの大切さを考える。

☆「さきほど、貝殻が地層に含まれている試料がありましたが、ボーリング調査では、貴重な化石が取れたりするのですか?」
★技術者
「宮城県は史跡、歴史上の遺跡が出てくるので、建物を建てる前には、一度調査をします。重要なものが出てくると、建物が建てられなくなります。」

☆「地震対策はどのようにしているのですか?」
★「地震は建物だけでなく、地面の中も揺れるので、地盤の調査が重要になります。地震がきても大丈夫なように、調査結果を利用して、しっかりと設計をしています。」

☆「学校のまわりの大地はかたいですか?」
★「さまざまですね。この辺りの丘陵はかたいけれど、川の扇状地はやわらかいです。でも、やわらかい方が、農作地には適した土です。」
☆「地形によって、土の利用の仕方が違うのですね。」

○講師の方と挨拶をする。

☆「今日は、科学者の目で、土の種類やはたらきについて実験し、技術者の目で、土の性質を知ってどうやって建物を建てればよいのかを考え、大地のつくりについて勉強しました。」
▼「科学者の●●さん、技術者の○○さん、どうもありがとうございました。」

○身近な地域の大地の様子を知り、大地のつくりと変化を学ぶことに興味を持つ。

プログラム実施の成果・感想(「大地のつくり」の授業案)

1時間目の科学的アプローチ

「そもそも、土ってなんだろう?」という問いかけから、子どもたちの興味を喚起し、土の色や感触などの五感を刺激する話を行った。子どもたちが本来、もっている自然を感じるという感覚を授業の導入において、呼び覚ますことが大切であることを感じた。土という当たり前に存在しているものに対して、「そもそも」と問いかけることで、身近な自然現象に対する見方がかわったと思われる。一例として、授業終了後に土をグランドや花壇に行って採取し、観察している子どもたちが多数いた。さらに採取した土で、ペットボトルの中に地層をつくる実験を行うなど、自ら実験を行うというステップまで到達した子どもたちも多数いた。このように自然を五感によって探求し、科学の言葉で表現しようとする科学者の姿勢が教育現場で伝わることが、科学のプロセスの中で、自ら考え、行動するという主体性・自発性が生まれた。

2時間目の工学的アプローチ

さらにサイエンスコーディネータとして、企業講師がつくる授業案を作成した。単にボーリング資料を見せるだけではなく、どのようにボーリングが行われるのかを写真とイラストをもとに技術者が説明を行った。1時間目で、いろいろな土に対する興味が深まったこともあり、ボーリング資料に書いてある数字ひとつひとつに対して、子どもから質問があった。工学的アプローチにおいても、数字がどのような実験をもとに得られものなのか、実験のプロセスをしっかり見せることが重要だと思われた。ボーリングのように実際に教室ではできない実験に対しても、写真を用い説明を実際の実験の手順にそくして行うことで、子どもたちは実験手順の実感を得たようであった。
 さらに、今回の「大地のつくり」の授業では、土の性質を知ることにとどまらず、「どのように家やビルなどの建築物を設計するか」というところまで、踏み込んだ授業が行われた。地震などの天災から、建物の安全を確保するための設計の工夫が話された。「大地を知ることではじめて、建物をたてることができる」というポイントが実感をもって、子どもたちに伝わった。学校で学ぶ教科書の知識が、どのように社会で役にたっているかというつながりができた瞬間である。
 講義を担当された技術者の方からは「1時間目の科学者の授業で、子どもたちが土に対する興味をもったので、ボーリング試料や、建物の設計に対する子どもたちの食いつきがよく、授業しやすかった」という意見をいただいた。「土の性質と土のはたらき」というテーマで、1時間目と2時間目の授業がつながっており、「そもそも、何でだろう?」という問いかけから、自然の探求が始まり「では、どうしたら利用できるか」という工学的アプローチになめらかにつながった。子どもたちにとっても1時間目の科学者の授業で、実験を自分たちで行い、グラフの作成をしたことは、定量化という実験のプロセスを自ら行ったということである。こうした体験をもとに、2時間目の授業でのボーリング試料のラベルの数字に関しても、どのような実験手法で得られたものなのか、自然に興味が湧いたようである。

最後に技術者が、実際に建物の設計に取り組んでいる現場での話をしたが、実社会で技術者がどのような仕事をしているのか、社会における職業観の育成になったのではないか。

学校の先生に関しても、打ち合わせでの段階から、どのような実験が行われるのか、興味を持った先生方がいて、実験器具の準備の仕方に関しても質問を受けた。学校の先生方が発展的な理科実験に関しても、興味をもったということは本教育プログラム実施の成果といえる。

今後の改善点(「大地のつくり」の授業案)

企業講師が授業を行う場合、クラスの全員が実験を行えるような実験準備をするのは、企業講師にとっての負担が多くなりすぎる。とはいえ、製品を並べて見せただけでは、子どもたちにとって、実感が伴わない理科の授業になる。そこで今回の理科実験プログラムにおいては、企業講師が、試料と映像を組み合わせながら、授業をおこなった。基本的にこういった授業構成は成功といえるが、今後の改善点としては、演示実験などが効果的であると考えられる。たとえば、建物構造設計において、実際に使われるコンピュータシミュレーションを見せるなどの方法が考えられる。

円滑な授業の実施(「大地のつくり」の授業案)

授業の導入部分において、本教育プログラムが理科の単元の流れの中で、どのような位置づけにあるのかを担任の先生に話していただいた。授業を円滑に進める上で、普段、子どもたちと接している先生が、授業の内容を大きく紹介し、科学者と技術者を紹介するということが、重要なポイントとして上げられる。
 さらに、授業中の「理科実験」においても、実験の手順を説明する際や、試料を見せる際に、子どもたちを教卓まで誘導してもらった。クラスの人数が多い場合には、担任の先生の誘導が必要なポイントとなる。
授業のまとめにおいては、担任の先生が、1時間目と2時間目のポイントを端的に説明し、今後の課題も説明したので、「大地のつくり」の今後の授業へのつながりになっていったと考えられる。



平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」実施報告

※詳細につきましては、こちらをご覧ください

授業プログラムリスト



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