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平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」
【授業タイトル】 天気と気温の変化(5年生)

文責:大塚 富美恵 (2008年11月28日) カテゴリ:経済産業省「理科実験プロジェクト」(2007年度)(16)

【協力企業】株式会社仙台測器社

【授業のねらいと概要】

項目内容
授業のねらい

日常の天気が、地球の大きなはたらきの中で起こっていることを理解する。天気を知るためには、さまざまなデータが必要であることを知る。

授業の概要

1時間目は、地球のしくみを再現する実験を行い、各地の天気がその大きなしくみの中で起きていることを実感する。はじめに、「そもそも、地球とは何か?」という問いかけから地球について考える。そして、地球の大きなシステム(大気の循環)を小さな世界で実現する実験を通して、大気の循環が起こる原因や役割を調べる。

5・6時間目は、天気を知るための観測方法を学ぶことで、天気の特徴を理解するための正確な記録をする。はじめに、天気を判断するために必要な測定機器を使って、正しい測り方を習得する。次に、フィールドワークを行い、天気を知るためのデータを取り、場所による観測結果の違いを考察する。さらに、気象現象の観測によって分かる地球環境の現状について学び、天気を知ることの大切さを考える。

【特別講師にお願いしたいポイント】

項目内容
特別講師にお願いしたいポイント
(本授業内容の中で、企業が関わるからこそできる点、授業の際に必ず踏まえてもらいたい点)

宮城県では、科学者と技術者の視点(理学的アプローチ・工学的アプローチ)から、「実験室から実社会へ」のつながりのある授業を提案しています。

<理学的アプローチ>

科学者が関わる意味...
・大気の現象を、地球と宇宙の関係から大きく捉えることができる。
・地球のモデルを実際に作れることで、興味を喚起することができる。

●「そもそも、地球とは何か?」と問いかけ、大気現象を実験的に再現する。地球への理解を深めるとともに、日常の天気が地球の大きなシステムの中で起こっていることを伝える。

<工学的アプローチ>

技術者が関わる意味...
・本格的な測定機器に触れることができる。
・天気を知るために必要なことや、注意することなどを実感することができる。

●天気を正確に知るためにはさまざまな工夫が必要であることを伝え、「天気とは何なのか?」を、測るという体験を通して実感できるようにする。

【授業進行例】(45分) [1時間目]

時間授業の内容・流れ
○児童の活動 ★企業講師が実施 ☆教員が実施 ▼主な児童の反応
学習のねらい必要な教具・教材
/☆留意点
導入
(5分)

○講師の方と挨拶をする。

☆ 講師の方を紹介する。
「今日は、科学者の●●さんと一緒に、『天気と気温の変化』の授業をします。」
★ 自己紹介する。

○科学者のお話"地球は生きている!?"を聞く。
★ 科学者
「今日は、生きている地球をつくる実験をします。地球が生きているとは、どういうことでしょうか?」
→地球について話をする。
・地球は太陽とエネルギーのやりとりをしている。
・エネルギーのやりとりで重要な役割を果たしているのが大気である。

★ 科学者
「まずは、地球に何があるか考えてみましょう。地球にあるものを教えてください。」
▼「海」「大気」「陸」「森林」「建物」...
★ 科学者
「地球にはたくさんのものがありますね。それでは、この小さな水そうに、陸、大気、海、植物を入れて、大きな地球にしていきましょう。」

○地球と太陽の関係に興味を持つ。

展開1
(20分)

○実験「生きている地球をつくろう!」

水そうで大気の循環モデルを作る。
<実験の手順>
①水そうの中に砂、水、草を入れる。
②水そうにアクリル板で蓋をする。
③スモークマシーンで煙を入れる。
④煙の動きを観察する。
⑤水そうに白熱灯を当てる。
⑥2分毎に煙を入れ、煙の動きを観察する。(計3回)

  

  

▼「あ!上に上がった!」
▼「陸から海に動いている。」
▼「太陽の方に吸い込まれている。」

○考察

★ 科学者
「生きている地球の姿はどんな様子でしたか?」
→太陽に見立てた白熱灯の有無や、白熱灯を当てた時間の差による、大気(煙)の様子の違いを聞く。
▼「太陽のエネルギーをあてる前、大気は下に行った。」
▼「太陽のエネルギーをあてる後、大気は上に行った。」
▼「大気はぐるぐる回った。」

★ 科学者
「太陽の光は地表をあたため、暖められた空気は上昇し、空に上がっていきます。上空は寒いので空気は冷やされ、下に移動します。このように太陽のエネルギーをもとに大気が大きく循環しています。これが生きている地球の姿です。」

○ 水そうの中で大気の循環を再現し、 地球で起きている現象を確認する。






○ 条件の違いによって、観察結果が異なることを理解する。

<使用するもの>
水そう、アクリル板、スモークマシーン、白熱灯、砂、水、草

展開2(15分)

○実験「大気の循環のしくみを探ろう!」

大気の循環モデルの温度を計る。
★ 科学者
「地球の大気が循環している様子を観察することができましたね。暖められた空気は上昇し、上空で冷やされ下に移動するといいましたが、どのくらいの温度差があるでしょうか?誰もがそうだと納得できる科学の言葉にして、大気の循環のしくみを探っていきましょう。」
「温度計を水そうの中に2つ設置して、上部と下部を比べます。」 →温度計のつけ方を説明する。

<実験の手順>
①温度計を水そうの上下に2つ設置する。
②水そうに白熱灯を当てる。
③1分毎に温度を記録する。(8分)
④グラフにし、水そうの上部と下部の違いを比べる。

  

  

○考察

★ 科学者
「実験結果を教えて下さい。地上付近と上空では、温度はどのように違いましたか?」
→児童に、グラフの結果を聞く。
→グラフ結果から分かることを考察する。

★ 科学者
「この実験で、暖められた空気が上昇し、上空で冷やされ下に移動する様子を、科学の言葉にすることができ、上部と下部の2つを比べることができました。」
→資料を用いて、実際の地球の大きさ、地上と上空の温度差を紹介し、実験で分かったことを整理する。

○ 観察結果に加えて、実験によって明らかにしたいことを明確にする。

○ 実験条件をそろえる必要性を理解する。






○ 温度を測り、大気の循環がおこる原因を考える。

<使用するもの>
水そう、アクリル板、スモークマシーン、白熱灯、砂、水、草、温度計、タイマー

まとめ
(5分)

○科学者の話を聞く。

"大気の循環の役割を考えよう!"
★ 科学者
「地球は太陽のエネルギーを吸収し、熱のエネルギーを宇宙に放出しています。ここに時間差があるのがポイントで、大気は地球上を大きく循環することで、エネルギーの輸送の役割を果たしています。この輸送のおかげで、地球の気温変化は比較的おだやかになっています。生きている地球とは、大気の循環で地球の温度という恒常性が保たれていることです。」

→これから学んでいく内容について児童に伝える。
☆「今日は科学者の●●さんと、大気の様子について勉強しました。単元『天気と気温の変化』では、みんなが身近に感じている天気について勉強していきます。天気は今日実験したような、地球の大きなはたらきの中で起こっています。」

▼「科学者の●●さん、どうもありがとうございました。」

○大気の循環の役割を理解する。

導入
(5分)

○講師の方と挨拶をする。

☆ 講師の方を紹介する。これまで学んだことを振り返る。
「今日は、技術者の○○さんと一緒に、『天気と気温の変化』の授業をします。単元『天気と気温の変化』では、科学者と大気の循環の実験をしたり、天気予報の資料を調べたりしましたね。」
→前の時間までに分かったことを、確認する。

★ 自己紹介する。

○技術者のお話"地球環境を調べよう!"を聞く。

★ 技術者
「みんな、異常気象って知っているよね。」

「今日は、数日間天気を観測するための方法を身につけてもらいたいと思います。それから、地球環境についても考えていきたいと思います。科学者と実験したときのように、地球の大きなはたらきを理解することです。」
→1時間目の実験を振り返り、この時間でやることと関係があることを伝える。

「最近、地球環境の問題が深刻になっていますね。どんな問題を知っていますか?」
→児童に環境問題について聞く。

「最近、オゾン層破壊による異常気象や、地球温暖化による気象状況や生態系の変化など、私たちを取り巻く大気と大地が汚染されています。」

「絶え間なく変動する気象現象を継続的に監視し、より的確に予測することが必要とされています。まず、身近な自然と街という環境を調べていきましょう。」

「自然と社会の間に存在するものが公園です。街の中の緑のはたらきをフィールドワークで調べよう。植物は太陽の光と二酸化炭素で、有機物をつくっています。緑は二酸化炭素を吸収するといわれてますが、公園のみどりはどのぐらいか。

○ これまでに学んだ内容を振り返る。




○ 天気をはじめとした、地球環境を知ることの必要性を理解する。

展開1
(20分)

○実習"測定機器を使おう!"(製品紹介)

★ 技術者
「フィールドワークを始める前に、測定機器の使い方、データの記入の仕方を勉強しましょう。」

→測定機器の使い方を説明する。
・ 温度について
・ 湿度について
・ 風について(風力、風速、風向)
・ 二酸化炭素濃度について

→観測データの記入方法を説明する。

○ 天気・地球環境を知るために必要なデータの種類を知る。

○ 観測データの記入の仕方を理解する。

<使用するもの>
企業の製品(観測に必要な測定機器)

展開2
(60分)

○フィールドワーク"測定機器で環境を調べよう!"

★ 技術者
「この公園と街の中のさまざまな場所を測定します。身近な環境で起こっていることを調べていきましょう。」

<フィールドワークの手順>
①公園と周辺の街のフィールドマップをつくる。
②各地点において、温度、湿度、風向き、二酸化炭素の濃度を測定する。
③フィールドマップに各測定データを書き込む。

  

○考察

★ 技術者
「観測した結果を教えてください。場所によってどんな違いがありましたか?」
→児童にフィールドマップを作成して考えたことを聞く。
W「公園の緑が多いところでは、温度が低いよ。道路の上、アスファルトの上の温度は高い。」
W「公園周辺の街の温度は、少し低くなっている。風向きが関係していて、風下の街の温度が少し、低くなっている。」
W「森の中の湿度は高いよ。」
W「公園のこの森の中では、二酸化炭素の濃度が少し、低くなっている。」

★ 技術者
→場所による観測結果の違いを考察する。
→フィールドマップのデータと地球環境問題を比較する。
「地球規模で起こっている環境問題が、公園の緑と街で起こっていることがわかりました。」

○観測結果を分析する。

<使用するもの>
観測に必要な測定機器
☆学校外での活動なので、事前に下見を行う。

まとめ
(5分)

○技術者のお話"測定機器を作る仕事"を聞く。

★ 技術者
「私の会社では、測定機器の開発、測量の販売をしています。先ほど、地球環境が大きな社会問題として取り上げられていることをお話しましたね。環境問題に取り組むために、環境がどのような状況にあるのかを知る必要があります。そこで、測量機器がとても役に立ちます。」

「今日みんなが、いろいろな場所でデータを取ったように、環境問題に取り組むときには、まず、環境の要素を測定し現状がどうなっているかを調べます。」

「大事なことは、長い期間にわたって、測定を続けることです。例えば、地球が温暖化していると言われるのは、地球の温度がこの60年間で1度上がったからです。同時に二酸化炭素の濃度も30%増えているので、温暖化の原因が二酸化炭素だと言われているのです。」

「このように、もっと地球環境のことを知るために、よりよい測定機器を開発しています。」

「人間の活動がいかに環境に対して、影響を与えるのか、を測定します。」

○講師の方と挨拶をする。

☆「今日は、技術者の○○さんと、測定機器を使ってさまざまな場所の環境を調べることができました。毎日の天気を知ることがみんなの生活に役立っているように、地球環境を知ることもとても大切なことですね。」
▼「技術者の○○さん、どうもありがとうございました。」

○ 測量機器の役割について知る。
○ 地球環境問題について改めて考える。

プログラム実施の成果・感想(「天気と気温の変化」の授業案)

単元「天気と気温の変化」においての理科実験として、本理科実験プログラムを開発した。天気という不安定な自然現象を対象にする単元のため、理科実験を行うことが難しいと思われている単元において、教室で行える理科実験を開発した。天気の根本的な原因となっている、地球の大気の循環を、そのスケールを教室の机までにスケールダウンした形で、実験・検証できるのが、本プログラムの特徴である。

2時間目の工学的なアプローチにおいては、環境問題に対して、冷静な判断力を科学的な視点で養うことを目的とした。環境問題が叫ばれている中で、今までの環境教室であれば、画像などで、世界における温暖化の被害を見せたり、危機的な状況を見せることで、怖さという記憶により、環境に対する問題意識が養われるとされてきた。しかし、そもそも恐怖という記憶では思考が深まらないおそれがあり、環境問題に対して、行動することはできない。

では、環境問題に対して、対応のアイデアがわかすには、どのような教育が必要なのだろうか。「なぜ、環境問題がおこるのか?」という仕組みを理解することが必要である。人間活動が地球環境にとってインパクトになった時に環境問題となる。そこでまず、自然の仕組みを知るという意味で、理科実験において、仮説をたて実験条件をかえながら、検証のための実験を行い、考察するプロセスを行うことが必要である。

本理科実験プログラムにおいては、地球の大気の循環のメカニズムをまず1時間目の授業で解明する。地球環境という実感からほど遠いものを、1時間目の授業で、体感する。さらに二時間目の工学的アプローチの授業においては、実際に身近な自然にある環境パラメータを測定し、フィールドマップを作成する。身近な自然で、一体、何が変化しているのか、温度、湿度、二酸化炭素の濃度など、ひとつひとつの環境パラメータを測定し、どのようなメカニズムで、環境パラーメタの値が説明できるか、考察を行う。このように、科学のプロセスを行うことで、自然に環境に対する意識を養われる。



平成19年度経済産業省「理科実験教室プロジェクト」実施報告

※詳細につきましては、こちらをご覧ください

授業プログラムリスト



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