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1次元量子力学における調和振動子
任意の初期運動量分布に対する時間発展

文責:遠藤 理平 (2011年11月22日) カテゴリ:仮想物理実験室(247)計算物理学(126)

任意の初期状態に対する時間発展」では、 任意の初期空間分布に対する時間発展を計算しました。本節では、任意の初期運動量分布に対する時間発展を計算するための表式を導出します。下図は本節で行う計算の概念図です。

早速定式化を行います。シュレディンガー表記における状態ベクトルは、個数演算子の固有ベクトル |n> と 座標演算子の固有ベクトル |x> を用いて、

(1)

 |\psi (t)
angle= \int_{-\infty}^{\infty}\!dx\sum\limits_{n=0}^{\infty} |x
angle\!\langle x|n
angle\!\langle n|\psi (t)
angle

と展開することができます。式(1)より状態ベクトルの運動量表記は

(2)

\langle p |\psi (t)
angle= \int_{-\infty}^{\infty}\!dx\sum\limits_{n=0}^{\infty} \langle p|x
angle\!\langle x|n
angle\!\langle n|\psi (t)
angle

となります。式(2)の左辺の各因子はこれまでに得られています。 個数演算子の固有ベクトルにおける座標表示は

(3)

\langle x|n
angle = \left(rac{m\omega}{\hbar}
ight)^{rac{1}{4}}\bar{H}_n(\sqrt{rac{m\omega}{\hbar}}x)=u_n(x)

であり、状態のベクトルの時間依存因子は

(4)

\langle n|\psi (t)
angle=\psi_n(0)\,e^{-i\omega(n+rac{1}{2})t}

となります。また、運動量演算子に対する固有ベクトルと座標演算子に対する固有ベクトルの内積は

(5)

\langle x| p
angle = rac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}} \,e^{rac{i p x}{\hbar}}

で与えられます。式(3),(4),(5)を式(2)に代入すると、

(6)

\langle p |\psi (t)
angle=rac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}}  \int_{-\infty}^{\infty}\!dx\sum\limits_{n=0}^{\infty} \,e^{rac{-i p x}{\hbar}}\,u_n(x)\,\psi_n(0)\,e^{-i\omega(n+rac{1}{2})t}

となります。 「任意の初期状態に対する時間発展」でも触れましたが、式(6)の右辺にあるψ_n(0)は、シュレディンガー方程式における積分定数であるので、各nに対して任意の値をとることができます。つまり、任意の初期運動量分布の時間発展を計算するためには、状態ベクトルの運動量表記の t=0 で初期分布を与えればよいことがわかります。 式(6)において、t=0 は

(7)

\langle p |\psi (0)
angle=rac{1}{\sqrt{2\pi\hbar}}  \int_{-\infty}^{\infty}\!dx\sum\limits_{n=0}^{\infty} \,e^{rac{-i p x}{\hbar}}\,u_n(x)\,\psi_n(0)

となるので、平面波と u_n(x)の直交性を利用することで、ψ_n(0)の表式が得られます。

(8)

\psi_n(0) = \int_{-\infty}^{\infty}\!dp \int_{-\infty}^{\infty}\!dx\langle p |\psi (0)
angle \,e^{rac{i p x}{\hbar}}\, u_n(x)

式(8)は、任意の運動量表記における初期状態<p|ψ(0)>を与えると、積分定数ψ_n(0)を決定することができるということです。 数値計算する際には状態の座標表示が便利なので、

(9)

に代入し、nに関して和をとることで時間発展を計算することができます。


ガウス型運動量分布の時間発展

運動量表記における初期状態が次のようなガウス分布の場合を考えます。

(10)

\langle p |\psi (0)
angle =rac{1}{\sqrt{\sigma\sqrt{\pi}}}\,e^{-rac{1}{2}\left(rac{p-p_0}{\sigma}
ight)^2}

ただし、p_0 は運動量分布の中心で、運動量 pはおおよそ \sigma = 10^{-24}[
m N \cdot s] 程度の大きさになります。式(10)を式(8)に代入することで、ψ_n(0)を計算することができます。 本節では、 ガウス分布の幅を決めるパラメータ \sigma = 10^{-24} に対して、 p_0 = 0 p_0 = 1.0	imes 10^{-24} p_0 = 2.0	imes 10^{-24} の3つの場合について、時間発展を計算します。

積分定数 \psi_n(0) の計算結果

下の図は、式(8)を用いて各運動量分布に対する\psi_n(0) を計算した結果です。 横軸は n、縦軸は \psi_n(0) の実部と虚部をそれぞれプロットしています。

p_0 = 0

p_0 = 1.0	imes 10^{-24}

p_0 = 2.0	imes 10^{-24}

p_0 が大きくなるに連れて、大きな n に対しても展開係数 \psi_n(0) が値を持つことが確認できます。これは運動量分布の中心が大きくなるにつれて、それを再現するためにはエルミート多項式の高次の項まで必要になっていることを意味します。

積分定数 \psi(x,t)quiv\langle x |\psi (t)
angle の計算結果

下図は式(9)を計算した結果です。 図の横軸が x、縦軸が \psi(x,t) です。 赤線緑線青線は、それぞれ \psi(x,t) の実部、虚部と絶対値を表します。 アニメーションの時間間隔は、\Delta t = 1.0	imes 10^{-16}[
m s] です。

p_0 = 0

p_0 = 1.0	imes 10^{-24}

p_0 = 2.0	imes 10^{-24}


計算結果の考察

初期運動量分布がガウス分布である場合、初期空間分布もガウス分布となります。 \sigma = 1.0	imes10^{-24} の場合、空間分布の幅はおよそ \sigma \sim 	imes10^{-10} となります。古典的調和振動子と同様、初期運動量 p_0 が大きいほど、より遠くまで移動しているのがわかります。運動量分布の中心 p_{0} = 1.0 	imes 10^{-24} を用いて、空間分布の中心座標の最大値 x_{\max} を具体的に計算すると、


x_{\max} = rac{p_0}{2m} = 1.11 	imes10^{-9} [
m m]

となり、計算結果と一致しています。 また、空間分布が初期状態に戻る周期は、「任意の初期状態に対する時間発展」で示したとおり、絶対値では T[s]、実部では 2T[s]であることも確認できます。 ただし、T = 2\pi/\omega =  62.8	imes 10^{-16}[
m s] です。

これで、1次元調和振動子において、任意の初期空間分布と初期運動量分布における時間発展の表式の計算結果をアニメーションすることが出来ました。 次節では、任意の初期運動量分布かつ任意の初期空間分布の中心を与える系に対する時間発展を計算します。




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