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学会等での発表
「大学の枠を超えた、学生・若手研究者主体のNPO法人『natural science』の取組み」

学会等での発表
文責:大草 芳江 (2007年9月24日)

日本物理学会第62回年次大会 (2007.9/21-24 北海道大学)

大学の枠を超えた、学生・若手研究者主体の
NPO法人『natural science』の取組み

【発表者】
NPO法人natural science理事 大草 芳江



1.NPO法人natural science設立の経緯

最近の話題として、科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業(平成18年度~文部科学省)や、「『博士余り』解消へ『20%ルール』!?物理学会が提言」(平成19年7月16日読売新聞)という記事等に見られるように、若手研究者の視野を広げ、大学以外の場でも主体的に社会に関わっていけるような人材を育成しようという動きが、国レベルで盛んになっています。

その一方で、当の若手研究者や学生はというと、主体的に活動できる場を、大学以外の場でも、実はそもそも求めているものなのです。そういった彼らの内発的なモチベーションが、新しいものをつくっていくエネルギーへとつながっていくような場を、大学という枠を超えたところでつくれればとの思いで、NPO法人natural scienceを設立するに至りました。


2.NPO法人natural science具体的な取り組みの紹介、及びその特徴

「natural science」の具体的な取り組み①(06年03月~)
「体験型自然科学の教室」の企画・運営

まず去年の3月からはじめたのは、「体験型自然科学の教室」という、幼児~小学生の親子対象の、科学教室の開催です。 私たちの活動拠点は宮城県なのですが、宮城には豊かな自然がありますので、その自然を活かして、春夏秋冬、定期的に教室を開催しています。この科学教室の一番のポイントは、子どもたちに教科書的な形式知を与えるのではなく、自然の中での体験に根ざした暗黙知の習得を重視している点です。そのため、教室の中で開催する教室とは違って、「自然の中で、自然のものをつかって、その場で臨機応変に実験系を組み立てる」ことは、条件出しや想定外の出来事への対応など、いろいろと難しい条件がありますが、むしろそのような状況を、若手研究者や学生は、日常とはまた異なった「チャレンジ」と受け止めているようです。これまで運営スタッフとして参加した若手研究者・学生は、のべ約200名となっています。そのような活動の結果、少しずつ地元にもこの活動が認知されてきており、これまで、約150組500名のご家族にご参加いただきました。

ここで、あくまで意識の上で、ですが、運営者として常に心がけていることがあります。誤解を恐れずに申し上げますが、この教室に参加している若手研究者・学生たちは、「教育のために」、「地域貢献のために」、活動しているわけではありません。もちろん、結果として、これらは教育や地域貢献に結びつく活動です。しかしながらあくまで、若手研究者・学生自身の知的好奇心や、非日常的なチャレンジ等、それぞれ個々人の内発的なモチベーションで彼らは教室に参加しており、そのエネルギーが教室運営の原動力になっています。それらの活動が、結果として、子どもの教育につながる、地域貢献へつながる、そういった場が、natural scienceという場なのです。運営者として、その構図が成立するよう、常に心を砕いています。お陰様で、地元メディアからもこれらの活動を、新しい取り組みとして、取り上げていただけるようになってきました。


「natural science」の具体的な取り組み②(06年08月~)
「n.s. 研究所」の企画・運営

次に私たちが取り組んだのが、「n.s. 研究所」という取り組みです。「n.s. 研究所」とは、研究者自身の日常的で素朴な疑問を研究のテーマに設定し、異分野の研究者同士が集まって、毎週土曜日、定期的に共同研究する取り組みです。

去年の8月から今年の8月までのテーマは、「自然の教室発 ドジョウの運動解析」です。これは先ほどご紹介した、「体験型自然科学の教室」で生まれた子どもの素朴な疑問(「なんで魚はまっすぐに進むの?」)から研究者がインスピレーションを得てはじまったテーマです。これらの研究成果をまとめ、今年の3月には日本物理学会領域13にてその成果を発表しました。また、今年の6月には独自にサイエンスカフェを企画・運営し、地域の方々へも、その成果発表を行いました。サイエンスカフェのテーマ、つまりn.s. 研究所のテーマ自体が、一般の方々にとっても素朴で身近なテーマであるため、テーマを共有しやすく、結果として、既存の「サイエンスカフェ」参加者層とは異なる層にも多数ご参加いただきました(サイエンスカフェ参加者の約7割が「サイエンスカフェ」という言葉自体を知らなかったというアンケート結果を得ました)。現在、「身近な素材を用いたソナーの開発」という新たなテーマで「n.s. 研究所」をしています。

ここでも先述の「体験型自然科学の教室」と同様に、研究者たちは、「地域貢献のため」に、サイエンスカフェに参加しているわけではありません。あくまで、自分の知的好奇心から研究活動を開始し、その結果を多くの人々と共有したい、という内発的なモチベーションで参加しています。natural scienceという場は、彼らの主体的な活動が、あくまで結果として、地域貢献に結びつく場です。そのような構図が成立するよう、運営者として、常に心を砕いているのです。


「natural science」参加スタッフの声 参加若手研究者のモチベーション

参加している研究者のモチベーションはそれぞれ異なりますが、それぞれに具体的なモチベーションを聞いてみると、「大型のプロジェクト研究だけでなく、個人から生まれる素朴な疑問も形にしていきたい」という思いや、「普段の研究で得た技術と知識を使って、普段とは異なる研究を、普段接することのない研究者と行うことで、技術の洗練・知識の再認識ができる」等に、大きな魅力を感じているようです。つまり共通して言えるのは、いずれにせよ個々人の内発的なモチベーションで、natural scienceに参加しているということです。


「natural science」の特徴

少しくどいようですが、 natural scienceという法人の特徴をもう一度申し上げますと、 ひとつひとつの活動のモチベーションは、「教育のための教育」でもなく、「地域貢献のための地域貢献」でもありません。あくまで、若手研究者や学生たちの内発的なモチベーションを原動力にした活動ひとつひとつが、結果として、教育や地域貢献にも結びつく。つまり、若手研究者や学生の内発的なモチベーションによる活動と、教育や地域を、結果的に結び付けていく場が、natural scienceという法人なのです。



3.NPO法人natural scienceの今後について

このようにして、これまでの活動が、少しずつ社会に認知されるようになってきました。これからは、外部機関とも連携していきながら、より活動の幅を広げていきます。具体的な今後の取り組みとしては、今年の10月に「エコプロダクツ東北2007(特定非営利活動法人環境会議所東北)」の環境科学教室や、「平成19年度理科実験教室プロジェクト(経済産業省)」での教育プログラム開発・教室運営があります。教育プログラム開発の過程で必要な技術や実験器具は、地元企業からの協力を得ながら、開発しています。このような外部機関や地元企業との連携は、研究者にとっても研究者としての幅を広げ、より社会にインパクトを与える形で、活躍の場を得られることにつながっていきます。このようにして、若手研究者・学生たちが主体的に活動できる場が、彼ら自身が積み上げてきた主体的な活動を基盤として、広がっていっています。

NPO法人natural scienceは、若手研究者や学生の主体的な活動が軸となり、これまで関連性のなかった組織とも、「科学」を切り口として連携していきながら、 地域を巻き込んだ形で、新しい価値をつくっていく場として機能していくことを目指して、これからも活動を続けていきます。「科学で地域づくり」をキーワードに、(結果として、)よりよい地域づくりの一端を担えるような仕組みづくりを、これからも目指していきます。


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